━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  MOON LIGHT EXPRESS Electrofile  ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイル . * ・*  [FILE: 000015] 2000,09,24 ★━━━━……‥‥  http://www.mlexp.com/ " *  . *  electrofile@mlexp.com + . ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 祝☆創刊一周年!今後とも『ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイル』を よろしくお願いします!! _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ※ このメールは購読登録された方に毎月一度送付させていただいてます。 ※ このメールは固定ピッチフォントで最適にご覧いただけます。 ■ INDEX ▼ イベント情報  ・国際新技術フェア2000 ▼ 掘り出し図書特選  ・僕らは星のかけら  ・星は生きている  ・世界の論争・ビッグバンはあったか  ・なっとくする統計力学 ▼ 今月のお勧めサイト  ・TRMM衛星画像公開 ▼ 投稿ノベルズ  ・夢の彼方に(9) ▼ コスモスコープ  ・クローンのテロメアが伸びる!?  ・届くはずのない贈り物  ・小惑星衝突は杞憂ではない! ▼ ムーンライトエクスプレスからのお知らせ  ・お詫びと訂正  ・あなたもSETIやってみませんか?  ・メーリングリスト登録者募集中!  ・MLEXP. エレクトロファイル 登録解除/アドレス変更について  ・ご意見、ご感想、投稿記事募集 ▼ 今月のコラム ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  イベント情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 国際新技術フェア2000 日刊工業新聞社主催、科学技術庁、文部省、工業技術院などの協力で、現在の先端 技術の展示、紹介などが行われます。この国際新技術フェアには、宇宙開発事業団 (NASDA)も出展しており、同事業団での技術レポートの最新版がCD-ROMや印刷物 で提供配布される予定です。平日ですが、入場料は無料ですので、機会があったら ちょっとご覧になってみてはいかが?  場所 :東京ビッグサイト 東2,3ホール  開催日:9月26日(火) 〜 9月28日(木) 10:00 〜 17:00  入場料:無料 ※このイベントに関するお問い合わせは当サイトでは受け付けていません。  ご不明な点がある場合は、下記へお問い合わせください。  日刊工業新聞社 総合事業局テクノ事業部  TEL : 03-3222-7021/FAX : 03-3222-7469  http://www.nikkan.co.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  掘り出し図書特選 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 僕らは星のかけら   原子を作った魔法の炉を探して 著者:マーカス・チャウン 出版:無名舎 価格:2,300円+税 ISBN:4-89585-934-7 ▼ 目次 プロローグ/原子/原子と星明かり/魔法の炉/エピローグ ▼ 内容紹介 宇宙論の発展と共に生まれてきた疑問、私達の体を作る物は何処からやって来たの か? ビッグバン直後の高エネルギー状態の宇宙でさえ、いくらかの水素、少量の ヘリウムしか作り出せなかった。なら、私達は何故にこんなに多くの元素から出来 ているのか? 何故に私達の周りにはこんなにも多くの元素が存在しているのか? こんな疑問に答えることが出来たのは、実は太陽の秘密を探る人たちだった…。宇 宙を探る人々と、彼らの思索を支えた物理学の発展を、ユーモアを交えたドラマと して読ませてくれる一冊。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ 星は生きている   星の誕生からブラックホールまで 著者:野本陽代 出版:筑摩書房 価格:951円+税 ISBN:4-480-04109-5 ▼ 目次 プロローグ☆ようこそ星の世界へ/夜空をいろどる星々/星が生まれる/働きざか りの太陽/たそがれをむかえた星々/そして死がやってくる/エピローグ☆星は生 きている ▼ 内容紹介 中学生の女の子エルデは、天文学の勉強をしている大学生の伴さんと星の世界の勉 強中。サイエンス館の天文学フロアを舞台に、好奇心いっぱいのエルデと伴さんの 会話で物語は進み、ついに星の最後の瞬間に何が起きるのかを知ります。超新星爆 発やパルサー、ブラックホールなど、宇宙の極限を垣間見せてくれる天体の秘密を、 恒星の一生と共に解りやすく学べる本です。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ 世界の論争・ビッグバンはあったか   決定的な証拠は見あたらない 著者:近藤陽次 出版:講談社(ブルーバックスシリーズ) 価格:750円+税 ISBN:4-06-257300-8 ▼ 目次 古代時代の宇宙論/天動説と地動説/天の川の銀河系と島銀河系/膨張する宇宙/ ビッグバン論と定常宇宙論/インフレーション・ビッグバン論、準定常宇宙論、そ の他の宇宙論 ▼ 内容紹介 今や宇宙論の常識となっているビッグバン宇宙論。しかし、実はその確かな証拠が あるわけではない。ビッグバンは宇宙の膨張や温度一定の背景放射などによって、 状況証拠による裏付けはあるが、それで決定的と考えるのは誤りである。本書では ビッグバン以外の宇宙論の例などと比較しながら、常識と捉えられがちなビッグバ ンの理論を検証する。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ なっとくする統計力学 著者:都筑卓司 出版:講談社 価格:2,816円+税 ISBN:4-06-154502-7 ▼ 目次 統計はどんな場合に使えるか/エントロピーとは何か/統計力学でのエントロピー /便利な関数/気体の統計力学/個体からの発想/協力現象は統計力学の神髄/な ぜボソンとフェルミオンとがあるか/量子統計の恩恵 ▼ 内容紹介 同著者によって、先に『なっとくする熱力学』が出版されている。本書はその続編 になるが、エントロピーという概念について特に詳しく解説されているので、エン トロピーという概念についてまず理解したい、という場合は、本書から読んで差し 支えないだろう。専門書のように数式を多用せず、なるべく概念的に分かりやすい 理論の紹介がなされているので、初めての人にも馴染みやすい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  今月のお勧めサイト ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ TRMM衛星画像公開  http://www.eorc.nasda.go.jp/TRMM/index_j.htm TRMMとは、宇宙開発事業団が1997年9月に打ち上げた熱帯降雨観測衛星のこと。 この衛星は赤道から南北両緯度35度の範囲で、降水量や水分量、雨雲の高さや温度 などを観測している。ここで公開されている画像データは、観測から3〜4時間程度 のリアルタイムな情報であり、一般にも今後その利用価値は高まりそうである。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  投稿ノベルズ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ● 夢の彼方に (9)      【 作:ジーン 】 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 「俺が神様だって?正気か!?」 「私は正気ですよ。何も知らないのはあなたの方です。  いや、知らないのではなく、知ろうとしていないのですね。」 菊池界は、一体俺の何を知っているというのだ?俺を知っているのは俺だ。玄多は そう思った。自分が神であるはずがない……しかし、どこかでそれを完全否定でき ないひっかかりがあることも、確かに感じていた。 「人はね、生まれてからある程度経験を積んで、ある常識というものが固定し始め  る頃から、日常的に自分の身の回りに起こる出来事を、ある程度予測して行動し  ます。最初は予測ですが、さらに経験することで、認識を常識の範囲に限定する  フィルタの役目をするようになる。つまり、自分の予測、あるいは認識に合わな  いことは認識の範囲からはずされていきます。  玄多さん、多分あなたもそうだ。もともと神の資質がありながら、その感覚は、  全く平凡な人間の感覚に限定されている。これは、あなたが下位レイヤで長く生  きていたためです。」 「もし俺が神なら、俺の思ったことが本当にそうなるはずじゃないのか?」 「なってるんですよ、玄多さん。この世界は、あなたの思った通りの世界に実現し  ている。だから、あなたはこの世界の神なのです。」 「そうは思えないな……」 「下位レイヤでも、そのことを示す兆候はありました。  大学の図書館で、その窓からちょっと気になる女性を見ませんでしたか?」 「女性?」 そう、確かに玄多は、図書館から黒ずくめの女性を見ている………。 「多分、そのとき玄多さんは、その女性を知っているような気がした。  その時点で、その女性は、玄多さんが昔から知っている女性になったのです。」 「なった?」 「それまでは、玄多さんとは縁もゆかりもない女性だったのです。後にその女性は  樋口という知人として、あなたの前に現れることになった。」 「何をいっている!樋口はLH号の乗組員に採用されたときからの知り合いだ。」 「それも、あなたの意識が作り上げた記憶です。そして、それが現実にそうなって  いる。」 「デタラメをいうな!」 「まだありますよ。下位レイヤの電車の中でも、あなたは樋口さんを見ている。  それは、あなたがそう望んだから。その後、樋口さんがあなたを訪問したのも、  あなたがそう望んだから。そして、何らかの共通の敵をでっちあげ、二人で協力  してその敵に立ち向かう、という状況をつくりあげた………」 玄多には理解できない。いや、理解したくない、のか……。 「下位レイヤでは、自分の本当の意識は無意識の世界へ追いやられます。その為に  自分の意識が実現している、とは思えないのです。実現しているのは、無意識の  意識、なのですからね。」 「面白いな。お前の言っていることは、SF小説にでも書けば、結構面白いと思う  ぞ。しかし、それが本当にそうだという証拠はない……。」 「証拠ですか。そんなものは必要ないと思いますがね。」 玄多も、心のどこかで、今自分の言ったことが無意味に思えていた。どちらの見解 が正しいかなど、最初から絶対的にあるものではない。 「もし俺が神なら、何故人類を滅ぼそうなどと考えたのか………」 「誰でも嫌になりますよ。人間の傲慢さにはね。そして、あなたは助けを求めた。  人間の中に、良識を持った者を見出そうとした。そして、その人に自分の世界の  救済を求めた。その結果が、今の人類レスキュー計画でしょう。」 妙に納得してしまう……。しかし、菊池界は何故そんなことを知っている?そんな ことは、玄多の無意識にあって、誰にも知ることはできないのではないか?しかし それを知りたいと思う意識も、表面に確かにあった。ということは…… 「菊池界、お前は、俺なのか?俺の、無意識………?」 菊池界はニヤリと微笑み、そのまま遠くへ吹っ飛ぶように消えていった! 途端に、あたりが、あの暗闇に包まれた………… 突然全てが分かりそうな、そして、別の何者かが、自分の胸を突き破って出てくる ような、そんな感覚が一瞬、その表面意識に流れ込んだ。自分の無意識が目覚めよ うとしているのか………… とてつもない情報量、そして記憶………… いやだ!知りたくない…………全てを知ると、自分が自分でなくなるような……… そんな感覚で、押し出されようとする無意識を抑えようとする自分がいる……… だめだ、俺が俺でなくなる………… ………… …………目覚めなさい……… 菊池界の声、いや、樋口の声…………? ……目覚めなさい あれは、他の誰でもない…………自分の声だ………… 目覚めて、全てを知り、全てを無に帰さなければならない………… 表面意識と無意識が入れ替わろうとするような感覚、そう感じた次の瞬間………… 容量オーバーで、その表面意識が消し飛ぶようなショックを受けた! そして、目の前に「真実の全て」が現れた……… それは、自分自身でもあった。説明無用にそこにある、それ。それを包含する自分 がいる。いや、はっきりした自分と外との境界などない………… その全てが自分、そして世界、知り尽くされた真実の全貌であった。 こういうことだったのか?菊池界、いや、自分の無意識よ。取りまきなど最初から 存在しやしない。樋口も、ドクターヨハンも、アート教授も、レスキュー計画も、 LH号も、そんなものは全て自分の意識がその中に溶け込む都合で作り上げられた 偶像にすぎない。 真実は、知ろうとせずとも、厳然としてそこにある………… それは、あまりに完成されていた。当然である。それが自分、同等に真実なのであ るから、疑うべきものがあるはずもない。 そろそろ、この自分の意識も終わりにしなければ………… 新たな真実が生まれることを願って………… そのサイクルが宇宙なのだから………… …………長い夢を見ていた。 真実を知る、それは夢から目覚め、同時に全てが終わるときでもあった………… ある夢見人が果てを見たとき、次の新たな夢見人が生まれるだろう。 そして、新たな真実の物語が始まる。 次の夢見人は、どんな夢を見るだろう……………… <完> 【 シリーズ 1999/12/24 より連載 】 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ※ 投稿方法、その他投稿作品に関するお問い合わせは次のアドレスまで。 投稿作品お問い合わせ先 electrofile@mlexp.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  コスモスコープ 2000年9月版 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ クローンのテロメアが伸びる!?《2000/09/21》 米ロックフェラー大学の若山照彦らが、前の世代の体細胞から遺伝物質を採取して 使うことでクローンマウスを作製し、これを何世代繰り返すことができるか、とい う実験を行った。最初、96個の卵細胞を使用し、その4.2%にあたる4個がクローン として誕生した。そのクローンから遺伝物質を取り出し、さらに次世代のクローン の作製を試みたところ、その成功率は2.0%に下がった。この実験を700回余りも繰 り返して、ようやく6世代目のクローンを1匹作製することに成功したという。これ でクローンを何世代にも渡って作製することは難しい、ということが示された。 このことは以前から予測されていたことであるが、この過程から、生物の老化に関 する新たな見識を迫られる結果も得られた。動物の染色体末端にある“テロメア” とよばれる保護構造は、通常細胞分裂をする度に少しずつ減っていくことが知られ ている。クローン動物の染色体は、生まれたときから細胞分裂を既に数回繰り返し ているので、テロメアも短くなっていることが予想された。ところが、クローンが 世代を重ねてもこのテロメアは短くなっておらず、むしろ少し長くなっているらし いことが分かったという。 また、世代を重ねたクローンマウスであっても、その肉体、知能いずれにおいても 至って正常であり、これまで、細胞分裂を繰り返すことでテロメアが短くなり、こ れが老化の一要因とも考えられていたが、今回の実験結果は、テロメアが、必ずし も老化に関わってはいない、ということを示している。  関連サイト:  http://www.natureasia.com/japan/nature/highlights/ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ★ 届くはずのない贈り物《2000/09/03》 地球は常に宇宙から様々な放射線を受けている。これを“宇宙線”というが、この 研究を行っている東京大学宇宙線研究所の観測の結果から、理論上届くはずがない、 とされている種の宇宙線が観測されているという。 同研究所が山梨県明野村に設置している装置で、極めて高いエネルギーを持つ宇宙 線を、1990年頃から数回に渡って観測した。この宇宙線の正体は光速近く(秒速30 万km)で宇宙を飛ぶ陽子などの素粒子である。この種の超高エネルギー宇宙線の発 生源としては、巨大なブラックホールなどの強力な重力源が想定されるが、地球か ら一億光年以内にこうしたブラックホールはないことが分かっている。ところが、 特殊相対論によると、一億光年以上離れたところから、今回観測されている程度の エネルギーを持つ粒子は届かない、とされている。 この宇宙は“宇宙背景放射”と呼ばれる絶対温度3Kの放射に満たされており、これ は、かつて宇宙の誕生の瞬間起こった“ビッグバン”の名残であるとされている。 この中を通過する粒子は、宇宙背景放射と反応してそのエネルギーは減衰していく。 一億光年も飛び続ければ、粒子は反応してなくなってしまう(或いは極めて低エネ ルギーに減衰される)はずである。特殊相対論は、この反応を起こすことを予測し ているわけだが、もしこの観測結果が正しければ、このような反応は実際には起こ っていないことになる。 ただ、こうした宇宙線の発生源として、ブラックホールのようなもの以外に未知の 発生源があることも考えられる。このことは、2005年から運用開始予定の国際宇宙 ステーションに宇宙線観測機器を搭載し、その宇宙線の発生源や正体の研究が進め られる予定。 【 素粒子の謎 】 お互いに反応して消えてしまったり、どこからともなく生まれてきたりする素粒子 とは、一体何なのだろうか?これに関しては、世界中の科学者が血眼になって研究 解明を進めている。素粒子の素粒子ともいえるクォークまで見つけてもまだ、それ を研究する者は満足しない。そもそも、素粒子には何故質量があるのか?というこ とは、素粒子物理学の中でも最も大きな問題の一つである。モノに質量があるのは 当たり前ではなく、学問としては、真面目に問題とされてきた事項なのだ。 1964年、この問題に対して有力な仮説が提起された。英国の物理学者ヒッグス博士 は、宇宙空間は質量の原因となる粒子で満たされている、として、空間を素粒子が 自由に飛び回れないのは、この粒子によって質量が発生し、引力が発生しているか らだ、と説明した。空間を満たしているというその仮想粒子は、発見者にちなんで “ヒッグス粒子”と呼ばれている。現在の“標準理論”は、このヒッグス粒子の存 在を前提としている為、この粒子を探すのに世界中の物理学者は懸命なのである。 これに関してこの夏、スイス素粒子物理研究所(CERN)で、このヒッグス粒子の存 在を示す兆候が観測されたという。ヒッグス粒子のような原初的な粒子を見るため には、それが見える形で存在していた時代、つまり、宇宙初期の高エネルギー状態 (に近い状態)を再現してみるしかない。このような状態をつくるには、巨大な加 速器を用意して光速近くで陽子を衝突させるなどしなければならず、施設そのもの がそう簡単に実現できるものではない。こうしたことも、新たな素粒子の発見、或 いはその正体解明を難しくしている、ともといえる。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ★ 小惑星衝突は杞憂ではない!《2000/09/18》 英国の天文学者グループが9月18日(英国時間)、危険な小惑星の探知、監視は急 務である、という報告書を公開した。この報告書によると、英国と欧州各国が共同 で、地球近傍小天体(NEO)探知の目的で、より大きな望遠鏡を南半球に建設する ことを提案している。 米航空宇宙局(NASA)においても、現在こうした小惑星探査は行っているが、その 探知調査では、直径1km以上の小惑星の9割を2009年までに発見することが目標とさ れている。同報告書では、これに対しても、NASAが探知対象としている直径1kmよ り小さい直径275m程度の小惑星にも重点を置くべきだとしている。このような目標 を達成するには、今後新たに望遠鏡をこうした探査に加えない限り、2015年まで先 延ばしになるだろうとしている。 【 衝突は日常茶飯事 】 小惑星や隕石、こうしたものは、宇宙のあらゆる場所で飛び交っている。これらが お互いに衝突することなど、これも宇宙では珍しいことではない。事実、宇宙空間 に星ができる過程では、塵や岩石、或いはもっと大きな小惑星などが衝突を繰り返 すことで星として成長する、とされている。お互いに引き合う引力があるのだから、 それらが近くにあれば、引き寄せられて衝突するのは道理に叶っている。 地球46億年の歴史を見ても、隕石や小惑星、或いは彗星などとの衝突は、かつて幾 度となく起こっていたことが、地層などを調べることで分かっている。恐竜を絶滅 に追い込んだ直接のきっかけとされている小惑星などは、おそらく記憶に新しいと ころ。ところで、それが何故今滅多に起こらなくなったのだろう?という疑問を持 つ方もいるかもしれない。実はそうではなく、今でも常に小惑星衝突の可能性を孕 んでいるのだ。人類の歴史など、この地球の歴史にとって、まして宇宙の歴史にと ってとるに足らない一瞬に過ぎない。人の体感する時間感覚で見ると、そうした衝 突は滅多に起こっていないように思えるだけ、なのだ。 地球にやってくる隕石や小惑星の多くは、火星と木星の間に群をなして漂っている 小惑星群を起源とするものである。また、太陽系の外周に“オールトの雲”と呼ば れる塵と氷が漂う空間がある。ここから、太陽の引力に引き寄せられて落ちてくる ものもある。これが彗星である。彗星にも、地球とニアミスを起こすのではないか と懸念されるものもある。例えば、地球にペルセウス座流星群をもたらしてくれる スイフト・タットル彗星は135年周期で太陽系を周回しているが、これが次の2126 年8月に太陽に接近するとき、地球と衝突する可能性があるのだという。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  ムーンライトエクスプレスからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ お詫びと訂正 先月発行分[FILE: 000014]の図書紹介で紹介しました『活動する宇宙』に対し、読 者の方より著者の間違いと、紹介文の正確性についてご意見をいただきました。前 述にて同書を単独一名の著者による書籍として紹介しましたが、正しくは複数の著 者、編者による共編となっております。訂正すると共に、読者及び関係者の方々に ご迷惑おかけしたことをお詫び申し上げます。  ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥  ◆ 活動する宇宙  《誤》  著者:柴田一成  《正》  著者:柴田一成、福江純、松元亮治、嶺重慎 共編  ▼ 目次  天体活動現象の物理/日震学/太陽・星の磁気流体現象/星形成/銀河中心領  域の活動性/銀河磁場と渦状腕/降着円盤の世界/降着円盤の磁気的不安定性  /宇宙ジェットの観測と理論/宇宙ジェットの磁気流体モデル  ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 尚、書籍内容については、今号から紹介に加えて目次を付加し、より客観性を高め る試みを致しております。 ■ あなたもSETIやってみませんか? 近頃他人のパソコンのスクリーンセーバーでカラフルなグラフを描きつづけている のをご覧になったことはありませんか?それはきっとその人がSETIをやっているの でしょう。 SETI(Search for Extraterrestrial Intelligence)とは地球外知的生命体探査のこ とで、宇宙からやってきた電波の中から地球外文明の発したデータを見つけ出そう、 というものです。 そして、このデータ解析をあなたのパソコンでもやってみよう、というのがSETI@h ome(セチ・アット・ホーム)です。この5月でSETI@homeも1年が経ち、参加者も全 世界で200万を超える規模になりました。 こんなに短期間にこれだけの人数を集めたインターネット上のプロジェクトは他に 類を見ないでしょう。そんなとても世界的な、それでいてとても簡単に参加できる プロジェクトがSETI@homeなのです。 まだあなたがSETIをやっていないならまだ遅くはありません。ぜひともSETI@home に参加してみてください。そしてその次には当ムーンライトエクスプレスのチーム に参加してみてください。 SETI@homeの参加方法、そしてチームへの登録は以下のページに説明を載せていま す(トップページから [ SETI@home ] をクリック!)。 http://www.mlexp.com/information/seti.htm ★ワンポイント SETI@homeを始めるときメールアドレスを入力するのですが、登録時にこれを間違 えると以降の情報の修正が出来なくなってしまいます。メールアドレスは間違えな いようにしましょう。                                    ☆ +                           チーム管理人:mojio …                            seti@mlexp.com + ☆ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ■ メーリングリスト登録者募集中! 当サイトでは、メーリングリスト(ML)を開設しています。MLとは電子メール を使用してインターネット上に擬似的な電子会議室を実現するものです。宇宙のこ とや科学、哲学全般について気軽に語り合ってみませんか? 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( 2000/09/22 月影 ) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ■プチコラム  −最近バックアップに失敗してパソコンのデータ全消滅(ジ)  −最近の疑問。ハイアンはなぜに小柳ゆきなのか?(も)  −提案ばかりで記事を書かない編集員(き)  −雨で三連休の計画台無し(月)  −パソコンから煙が出るところ初めて見た!!(お) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  発 行 : ムーンライトエクスプレス  編 集 : ムーンライトエクスプレス編集室 WebURL : http://www.mlexp.com/ E-Mail : admin@mlexp.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━