★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥ . * ・* MOON LIGHT EXPRESS Electrofile [FILE: 000033] ☆━━━━……‥‥ ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイル " *  . * 《総発行部数 4,331部(前号発行時点)》 ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥ ●このメールマガジンの登録変更/解除はこちらから → http://www.mlexp.com/mm/regist.htm ◆INDEX◆ ▼特選図書 ○宇宙論のすべて ▼ノベルズ ○知恵の実を食べたイヴ ▼コスモスコープ ○空は明るくなったり暗くなったり ▼お知らせ ○あなたもSETIやってみませんか? ○メーリングリスト参加者募集中! ○投稿作品募集 ▼コラム ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CHOISE BOOKS ━……‥‥ 特選図書 ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥ ◆ 宇宙論のすべて 著者:池内了 出版:新書館 価格:1,800円+税 ISBN:4-403-25036-X ▼ 目次 コスモロジー/星の世界/銀河宇宙の姿/宇宙の記述/宇宙論の歴史/物理の基礎 理論/人物篇 ▼ 内容紹介 タイトルの通り、現在までに一般に知られているさまざまな宇宙論がラインナップ されている内容となっている。宇宙論の黎明から現在の最新宇宙論に至るまでの、 理論の系譜の紹介に始まり、宇宙論の礎となっている天文学や物理学理論の解説、 宇宙論に関係する用語の説明や、理論を提唱してきた人物の紹介まで幅広い。入門 書としてはお手頃な内容である。【紹介:MLEXP.】 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ★ このコーナーに本を紹介してください! あなたのお薦め本を紹介してください。内容は、宇宙、科学一般に関する専門書、 解説書、読み物などです。詳しくはこちら → http://mlexp.com/mm/books.htm 紹介先はこちら electrofile@mlexp.com ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NOVELS ━……‥‥ ノベルズ ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥ ● 知恵の実を食べたイヴ 第二話         【 作:おも 】 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ……なぜだ…… ……おまえは、なぜこたえぬ…… ……わたしは、まっているのに…… ……おまえは、なぜ、つくられたのかを…… ……わすれて、しまったのか…… ん、ああ、また夢か。 まったく、何聞かれたか憶えちゃいないが、俺なんぞにそんなに難しいこと 聞くなよ。 ううっくく、何時間寝てたんだ? !! え、俺、9時間も寝てたんか! リリのやつ起こしてくれてもいいだろうに……まあ、起こされるといつも文句 言ってるんだが……。 俺がコクピットに入っていくと、なんか静かで空気が冷たい感じがした。 「ん……リリ、いるのか?」 返事はない。 ……おかしいな、あいつが黙って当直をサボることなんて無いんだがな…… 大して広くもないコクピットを見渡しても、いつもと変わりはない。かと、思った が、正面のシートの背もたれのてっぺんに金色の髪を纏った物体を見つけた。 ……ありゃ、頭だよな…… 思いつつシートの前に回りこんでみると、思った通りリリが狭いシートの中で膝を 抱えるようにして眠っていた。 「おいおい、俺が近づいても判らんほど寝こけてて、警報鳴っても気が付かんの じゃねえのか」 と、文句をいいつつも、どうも起こす気になれない俺だった。しょうがないな。 しばらく、あきれていた俺だったが、そのうちリリの様子がおかしいのに気付いた。 どうも、うなされているらしい。 ……う、……ん、なにを?…… ……なにを、答えればいいの?…… なに? 何かを聞かれてるのか? 俺がよく見る夢と同じか。ひょっとしてリリも俺と同じ夢でも見てるんだろうか? ……わたしは、わすれた……なにも……おぼえては…………あっ! 「あれ、ここは……」 どうやら、目が覚めたらしい。 「よう、おはよう」 「え、あ、おはよ〜」 まだ、ぼけてる。 「えらくうなされてたようだな」 「う……ん。なんだか、よく憶えてないけど……そっか、わたし、寝ちゃったんだ」 「ま、いいさ。今度の旅は結構長かったからな」 「あ、ごめんなさい。そんなに疲れてたとは感じないんだけど……」 「いいって。こんどは俺がいるから、ゆっくり休みな」 俺はどうも元気のないリリを怒る気にもなれずに、疲れが原因だろうと思って 休ませようとした。しかし、リリは首を横に振ると、シートから立ちあがった。 「ううん。いま休んだから。それに今寝るとまた嫌な夢を見そうだし、キャプテン とここに居るよ」 「そうか。だが、もうちょっと休んどいたほうがいいから、後ろで寝てな」 「そうだね。でもまたうなされたら、キャプテン起こしてね」 「ああ、安心して休みな」 俺の言葉を聞いて安心したのか、一番後ろのキャプテン用のシートを リクライニングさせると寝転がりながら話し掛けてきた。 「何かあったらすぐに起こしてね。目が覚めた時に一人なのは嫌だよ」 「ああ、大事な相棒なしで、どこにも行かないって。安心しな」 「うん」 やっと、安心したように目を閉じた。 辺境へ来ることを決めてから1年、あっちへ行ったりこっちを通ったりと広い宇宙 を見聞するかのように、幾つもの「鏡」を抜けてきたが、ようやく目的地が近くな ってきた。一つの「鏡」に対応した出口は常に一つしかないので、目的地によって はたくさんの「鏡」を抜けることになる。(鏡は全部で16枚。入口、出口の2枚で 一組なので、ゲートは8個所存在する) ここまでに、4個所のゲートを抜ける結構な長旅だったが、1年かけてようやく終 わりに近づいた。もっとも、「鏡」を使わなかったら、千年以上かかったかもしれ んけどな。 ……どうも、辺境に近づくにつれて、妙な感じが強くなってきたようだな…… ここのところ、夢の内容も変わってきたような気がする。まあ、相変わらず、起き ると同時に忘れてしまうんだが……。それより気になるのは、リリも同じ様な夢を 見てるんじゃないかってことだ。二人揃ってだとすると、何か理由があることだと 思う。と、言っても中身を憶えてないんじゃどうにもならんか。 などと考えてるうちに、長距離レーダーに反応があったことを合成音声が告げて きた。 「ん、どれどれ」 レーダーを覗き込む。3Dグラフィックが互いの位置関係を立体的に把握できる ように、擬似的な映像を結んでいる。 「反応は一つか。船、かな?」 長距離レーダーのレンジいっぱいの外側からギャラクシーウィンドに向かって、 一つの光点が近づいてくる。その速度は比較的ゆっくりで、俺達との相対速度を 考えると同じ方向へ移動しているところへ俺達が追いつこうとしているようだ。 俺はレーダーのモードを切り替えると、その物体を構成している物が人工のもので あることを確認した。 「追い越すくらいのことは問題ないだろ。ほっとくか」 相手が特に危険な動きをするわけでも無さそうなので、黙って通り過ぎることに した。まあ、一応相手との相対的な速度差が変化するようなら知らせるよう、 システムに指示を出して後ろのリリの様子を見る。 「くくっ、よだれ垂れちゃいそうだな」 半分口をあけて気持ち良さそうに眠っている顔を見て、俺は笑った。 そのまましばらくは、のんびりとディスプレイに映った光点を眺めていたが、当の 光点から通信が入ってきたと聞いて、眉をひそめた。 「通信……一体なんの用だ?」 ……リリを起こすべきかな……ま、いいか。ただの挨拶かもしれんし……。 俺は、相手からキャプテン用のシートで寝ているリリが見えないように、一番前に あるパイロット用のシートに着くと、通信回線を開いた。 「こちら、ギャラクシーウィンド。所属は連合の航路部だ。宇宙の掃除屋に何の用 だい」 「突然の通信、失礼しました。私は、太陽系立学園コロニー群の考古学棟で研究員 をしている、リック・ノーランと言います」 モニターに映し出されている人物の顔は、知的と言うよりも人の良さそうな若者の もので、とても名門コロニーの研究員には見えない。 「実は、この近辺に調査に来ていたんですが、思ったより長引いてしまって物資が 不足しちゃったんですよ。よろしかったら、そちらに余裕があれば物資を買い取ら せてもらえないでしょうか?」 「おいおい、物資が不足って、宇宙じゃ命取りだぜ。余裕を見て用意しとくのが当 然だろうが」 「それが、目いっぱい余裕を持って来たんですが、2年以上帰らないでいたら、さ すがに全部使い切ってしまって……」 「あきれたな。学者さんってのはみんなあんたみたいに無謀なのか?俺が通らなか ったら、干上がるまでそこにいたんじゃないだろうな」 「いやあ、別に無謀な訳では無いですよ。サンプルの収集と解析に夢中になってた だけで、みんなミイラになりたくて学者してるわけではないですから」 「十分、無謀だって。いい加減なことしてると、宇宙では本当に命をおとすぜ」 「以後、気を付けます」 にっこりと微笑む学者先生には悪いんだが、うちもあんまり余裕は無いんだよな。 長旅だったし。 「残念だが、こっちも長旅の途中だったもんで、あんまり余裕はないんだ。とても あんたを何ヶ月も養う程は出せない」 「そうですか。しかたありませんね。当面必要なだけあれば助かります。私も手近 な星系で仕入れをすることにしますんで」 「 それがいいだろうな。じゃ、船をまわすぜ」 「ありがとうございます」 几帳面に礼を言うと、モニターの中の人の良さそうな顔は引っ込んだ。 「さてと、それじゃ、リリを起こすか」 操船担当として俺に起こされたリリは、なにやら変な顔をしていた。 「どうした、なに変な顔をしてるんだ?」 「ああっ、ひどいよキャプテン。わたしだって、好きで変な顔に生まれてきた訳 じゃないんだから」 リリの奴、自分の顔を変だと思ってるらしい。俺はリリのそういうぼけた所が気に 入ってるもんだから、ついついからかってしまう。 「おお、膨れた膨れた。宇宙服なしで船外に出たみたいだな」 「ううう、もう怒った。こんどキャプテンが船外活動してる時に、ギャラクシー ウィンドで頬擦りしてやるから」 これは恐い。 「判った判った。もう言わんから、って言うより、ほんとは結構かわいいと思って るんだぜ」 「本当にそう思ってるの?」 「俺の性格知ってるだろ」 「うん、出任せは言わないもんね、ライは」 「こら、ここではキャプテンって言え」 「はいはい」 「よし。じゃ、船回しな」 「了解。キャプテン」 前に、リリがパワーアップしようと言っていたが、ギャラクシーウィンドは十分に 高性能な船だ。レーダーに映るリックの船をあらわす光点はどんどん近づいてくる。 と、操船中のリリがまだ変な顔をしてるのに気付いた。 「おい、リリ、さっきから表情が冴えんようだが、具合でも悪いのか?」 「え、あ、べ、別に悪いところなんかないよ」 「でも、さっきも変な……、いや、冴えない表情だったぜ」 「うん。なんか胸の奥のほうで、もやもやした感じがするの」 「苦しいのか?」 「ん〜。苦しくはないけど、もどかしいような感じかな」 なんだろな。まあ、苦しいわけじゃないなら、そう心配することでもないのかもな。 「じゃ、そろそろ接舷するから、慎重にな」 「うん。大丈夫」 「あんた、本当に干上がる寸前じゃないかよ」 リックの船へ補給物資を届けに来た俺は、貨物室を見て呆れ果てた。 「いや。まあ、死なない程度に節約すれば、まだ何週間かはいけますよ」 「あんたの死なない程度ってのは、かなりやばそうだよなあ」 「おかげさまで、人並みに食事をしながら帰れそうですよ」 「そりゃ良かった。しっかしこんな辺境で何の研究してるんだ?」 俺の疑問を聞いた考古学者さんは世にも嬉しそうな顔をした。ヤバイかもしれん。 「あはは、そんなに情けない顔をしなくても、こむつかしい話はしませんよ」 「お、おう。じゃ、話してくれ」 リックには、教師としての才能もあるらしく、俺でさえ理解できる解りやすい話を してくれた。 それによると、こんな感じだ。 リックの研究テーマは地球文明の古代史だったらしい。 そもそも、人類が手にした最初の文明といえるものはいろいろ説があって、火を使 う、農耕をする、家畜を飼う、金属を扱う、など、様々な瞬間を文明の夜明けと呼 ぶ人達がいる。そして、かなり突飛な考えの中には、他星系の知的存在からの働き かけがきっかけであると信じる人達もいたりする。 そういう人達にとって、この宇宙時代の到来は、他の星の文明を発見する可能性を 持つ時代として待ちに待った時代であった。ま、実際には10やそこらの星系を調 査したところで、そんな都合よく異星人の痕跡なんぞ見つかるわけがない。 ところが、あきらめかけていた彼等のもとにビッグニュースが飛び込んできた。太 陽系から35光年ほど離れた、辺境近くのポルックス星系で異星生命の知的活動の 痕跡が見つかったらしい、とのことだった。 彼らは狂喜した。だが、その生命体の活動が俺達人類の文明の始まりと関わりがあ るかどうかは、彼らには判断できなかった……。 と、まあここで我らが学者先生リック・ノーランの出番となったわけだな。つまり、 謎の異星文明と、地球の古代文明との接点を探し出して、二つの文明の関連を証明 することを依頼されたらしい。貴重な資料を手にしたリックは過去の遺物の研究に 没頭するあまり、自分が遺物になりかけてたわけだ。 「だが、異星の文明の痕跡を発見なんて大ニュースが流れれば、俺だって知ってる はずだから、この話は極秘の話なんじゃないのか?」 「ええ、そうですね」 「そうですね、じゃないだろ。俺、聞いちまったぞ」 「私は別に極秘にしたいわけではないですし、多くの人が知る権利を持っていると 思いますよ。それに、あなたには助けてもらったわけですから、何かのお返しがで きれば嬉しいですしね」 「俺はヤバイと思うんだがなあ」 リックは学者とは思えないほど柔らかい表情で微笑むと、その話を打ち切った。 「それじゃ、私も出発するとしますか。私は取りあえず一番近いポルックス星系へ 向かいますが、あなたはどうされます?」 「俺達はもう一回ゲートを抜けるつもりだ。プロキオンが目的地だから、一気に渡 るさ」 「そうですか。あの星系は20年も前にゲートを発見されたのに、いまだ多くの部 分が未開発の空間として、手付かずのままみたいですね」 「ああ、俺達の出番も多いはずだから、出稼ぎってわけだ」 「この分だと、宇宙にも面白い発見がいろいろありそうですねえ。私も行ってみた いですよ」 「あんたじゃ、生きて帰ってこれる可能性は、コインの表が出るのと同じくらいだ ろうから、止めといた方がいいだろうな」 「まあ、そうでしょうね。じゃ、失礼します。相棒の方にもよろしく」 「ああ、気を付けてな。この辺は太陽系周辺よりは、障害物が多いから」 リックの船に荷物を移し終えた俺達は、それぞれの目的地へ向かうことになった。 もっとも、次の<ミラーゲート>はポルックスからさほど遠くない空間に存在する んで、しばらくは同じ航路上を移動することとなる。どうやら、船の性能の違いか らギャラクシーウィンドが先行してどんどん離していってるようだ。 俺は相棒が本調子でなかったのが気になって、聞いてみた。 「あれから調子はどうだ?」 リリはまだ妙な感じが残るのか、いつものニコニコ顔ではなかった。 「だいぶ良くなったみたい。さっき、物資を運んで、学者さんの船に入った時が一 番変な感じが強かったけど、あの船と離れた頃から少しづつ無くなってきたよ」 「そうか、あの船に何かあったのかな?異星の生命体に関係した何からしいんだが」 「へえ、見てみたかったな」 「貴重な研究資料だろうから、そう簡単には見せてはくれんだろ」 「でも、異星の生命って一体どんなだろ」 「目が10個に口が3つ、足が20本もあるそうだ」 「へ〜。凄い」 「って、冗談だよ。本当は俺も見せてもらってはいないんだ」 「あ、キャプテンの馬鹿〜。本気にしたじゃないの」 「そんな生き物がいる訳ないだろ。ただ、その異星人が大昔の地球の文明に影響を 与えたことがあるかどうかを調べるのが、あの危ない先生の目的なんだと」 「ふうん。人類との関係かあ。結構あったりして」 「あまりあって欲しくはないな。前にそんな事があったとなると、これからもすぐ に他からの力を頼りたがるやつらが出てきそうだからな」 ……少なくとも今の俺達が、何処の誰ともしれない連中のお膳立ての上に成り立っ てるとは思いたくはない……しかも、それがリリと、何らかの関係があるなどとは 考えたくもない…… 「……どうしたの?」 「ん、いや、別に何でもないさ。どうせ、リックともここで別れるし、俺達とは関 係ない話だからな。さあ、下らん話はこれくらいにして、飯でも食おうや」 俺がギクシャクと話を切り上げると、リリは気にした風もなくニコニコ顔になった。 「やった。今日はキャプテンがご飯を作ってくれる日だよね」 「ん、もう俺は料理作らんぞ」 「ええ〜〜、どうして〜〜」 「さっき物資が減ったんでな。これからはプロキオンに着くまでは、コンピュータ ーに自動調理をやらせて、一番効率の良いメニューにすることにした」 「そ、そんな〜。コンピューターの料理なんて、味気なくて嫌いだよ〜。3日にい っぺんはキャプテンの手作り料理じゃないと、嫌だよ〜」 「んなこと言っても、しょうがないだろが。無駄遣いしてたら、向こうに着く前に 干上がっちまう」 「じゃ、じゃあ、鏡に向かう前にポルックスに寄ろうよ。そこで、食べ物仕入れて から、プロキオンに向かえば良いじゃない?」 「そんな寄り道してる余裕も金もないだろ。俺達、今、仕事してないんだぜ」 「大丈夫だって。今までの蓄えが結構あるの知ってるんだから」 「う……。だって、お前、それは………」 ……お前がいつかこの船を出てって、普通の暮らしをする時の為に渡せるように…… 「……キャプテン。いいえ、ライ。私はいつまでもライと一緒だからね。二人が今 まで通りの生活をするのに、そんなにお金は必要ないでしょ。ギャラクシーウィン ドもまだまだ元気な船だしね。それより、今度みたいな旅が、次いつ出来るかわか んないでしょ。お願い」 ……しかたないかな…… 「しょうがねえな。じゃ、お前のしたいようにするか。ま、たしかに金の心配さえ 無ければ、そういう旅もありかもな」 「ありがと〜。ライ。じゃ、今日も料理作ってくれるんでしょ?」 「ああ〜。まったく、宇宙服がきつくなっても知らねえぞ」 「いいもん。食べるの止めるくらいなら、宇宙服変えちゃうもん」 「へっ、何ならついでに身長も伸ばせよ」 「いっぱい食べれば、伸びるよ。わたし、育ち盛りだからね」 「わかったよ、飯にしよう」 飯の前にリックに連絡を取ると、後で会おうと言ってきた。物資の搬入が済めばす ぐに宇宙に戻っても良かったが、久しぶりに地面に足をつけることだし、あの先生 と酒でも飲もうかと考えて、ポルックス星系の第4惑星で落ち合うことにして通信 を終えた。 恒星ポルックスは、太陽系から35光年ほど離れた、スペクトルタイプ−K0型に 属する巨星の中でも暗めの星で、表面温度は5千度程度と太陽よりも低い。かなり 進化の進んだ恒星で内部に様々な元素を持っているし、質量もさほどではないので、 短時間に燃え尽きることもない。つまり、生命の発生に適した恒星と言える。この 近くの空間から、異星生命体の痕跡があったのは必然なのかもしれない。 俺達を乗せてポルックス星系へと進入したギャラクシーウィンドは、星系の中ほど で公転している第4惑星「レダ」へと進路を取った。「レダ」は、寒さと乾燥が地 表を覆っていた地球型の惑星だったが、人類が入植するに当たって、温室効果ガス を使った大気改造によって過ごしやすい気温を保つことに成功していた。まあ、乾 燥は相変わらずだし、気圧も少々足りないんで何も無しで歩き回れる所ではないん だが。 「『レダ』に降りたら、俺はリックと会うことになってるんだが、 お前はどうする?」 「え、わたしも行っちゃダメなの?」 「酒、飲もうと思ってるんだがなあ」 リリはニッコリと笑顔を作ると、言い放った。 「わたしも飲むからね」 「ぐ、行ってもいいけど、酒は止めとけよ」 さらに、ニッコリ。 「いや」 「この……。飲みすぎるなよ」 「お酌してあげるね」 ……アタマいてえよ…… 第二話 終わり ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ★ このコーナーに関するお問い合わせ このコーナーや掲載作品に関するお問い合わせは次のアドレスまでどうぞ。 お問い合わせ先はこちら electrofile@mlexp.com 感想等も同じアドレスで受け付けています。また、このコーナーへの投稿方法など については、この後の「お知らせ」にて。 ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ COSMO SCOPE ━……‥‥ コスモスコープ ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥ ◆ 空は明るくなったり暗くなったり 《2002/05/01》 太陽周辺の空が、実は11年周期で明るくなったり暗くなったりしている、という。 これは、国立天文台が1日の発表で明らかにしたもの。太陽は11年の周期で活動の 極大期、極小期を繰り返しているが、それに連動する形で、太陽周辺の空の明るさ も変わっているのだという。空の明るさが変化する要因として太陽の活動が関係し ていることは以前から考えられていたが、今回、太陽コロナの観測を続けている乗 鞍コロナ観測所のデータからこれが裏付けられた形となった。 ただ、太陽自体の明るさはほぼ変わらない。空の明るさに関係するのは、大気中に 存在するエアロゾルと呼ばれる微粒子による光の散乱などである。太陽活動の影響 によって、この微粒子が多くなったり少なくなったりすることで明るさが変化する ものと考えられている。乗鞍コロナ観測所で得られたデータによると、最も明るい のは太陽活動の極大期の少し後、反対に最も暗いのは極小期に重なるという。 【 太陽活動の周期? 】 太陽にも、その活動が活発な時期とそうでない時期があり、その周期は、大体11年 であることが知られている。太陽の活動が活発な時期は、太陽表面に黒点と呼ばれ る黒い斑点が多数出現し、太陽の表面で起こる爆発(フレア)によって周囲に放出 される放射(荷電粒子)の量も増える。この太陽放射が、地球の大気の状態に大き く影響しているのである。 太陽の放射が地球の空に繰り広げる最もドラマチックな現象といえば、地球の極地 などで見られる「オーロラ」だろう。オーロラは、地球の大気と、太陽からやって きた荷電粒子とが衝突して、その粒子が光り輝くという現象だ。太陽活動が活発な 時期は、太陽からの放射も増えるので、オーロラも盛んに現れるようになり、まれ に「低緯度オーロラ」といって、極地以外の比較的低い緯度の地方でも(北海道な どでも!)オーロラが出現することがある。 太陽周辺の空の明るさも、この太陽からの放射によって、地球大気中の微粒子の量 が変化し、それが活発な時期には微粒子も増加するので、それによって太陽周辺の 空も明るくなる(大気中の微粒子が多いほど光が良く散乱するので、空はより明る くなる)と考えることが出来る。また、この微粒子の量の変化は、雨量や気温など の気象の変化にも少なからず影響があると考えられている。 ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ INFORMATION ━……‥‥ お知らせ ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥ ◆ あなたもSETIやってみませんか? 地球外文明探査を自宅のパソコンで行おう、という世界規模のプロジェクトSETI@ homeに、当ムーンライトエクスプレスでもチームを作って参加しています。SETI@ homeは学術的にも意味のあるプロジェクトです。ぜひとも登録してみてください。 よろしければ当チームにも参加してみてください。  SETI@homeの参加方法についてはこちらから  http://www.mlexp.com/mm/seti.htm SETI@homeお問い合わせ先 seti@mlexp.com (mojio) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ メーリングリスト参加者募集中! 当サイトでは、メーリングリスト(ML)を開設しています。MLとは電子メール を使用してインターネット上に擬似的な電子会議室を実現するものです。宇宙のこ とや科学、哲学全般について気軽に語り合ってみませんか? 参加方法など、詳細はこちら  http://www.mlexp.com/ml/index.htm ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ 投稿作品募集 ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイルに掲載する小説、エッセイなどの 作品を募集しています。テーマは、宇宙、科学、哲学などに付随する内容。密かに 暖めているネタ、書き溜めて眠っている小説などありませんか?そのような作品を、 是非ここで発表しましょう。4000人を超える読者にあなたの作品をお届けすること ができます! 投稿先アドレスはこちら sf-post@mlexp.com 詳細はこちら  http://www.mlexp.com/theater/efilepost.htm ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ COLUMN ━……‥‥ コラム ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥ 木星に、新たに衛星が11個発見され、合計39個となり、めでたく太陽系一たくさん 衛星を従える惑星となったそうだ。新たに発見された衛星のサイズだが、いずれも その直径は数キロメートルと、衛星と呼ぶには非常に小さなものである。しかし、 きちんと木星の衛星軌道に乗っており、この度真正の衛星と認められた。 よく「天文学的な数」とか「星の数ほど」ということを云うが、その「星の数」と いうのは一体いくつくらいか、考えたことはあるだろうか。これは、話によると、 全天で目に見えるだけで、大体6000個くらいなのだそうだ。地球の半球では、単純 計算で、その半分の3000個。この数、意外に少ないと感じたのは私だけだろうか。 実際、星の数はそんなものではないはずである。それこそ、私たちの想像を絶する 無限に近い数存在するだろう。3000とか6000などという数値は、私たちが見ている 数というのが、その中のほんの一部である、ということを象徴しているような気が する。或いは、その数が私たちの世界では全てである、ということである。 いずれにしろ、太陽系という身近な場所にさえ、今になってようやく見つかるよう な星があるということである。人智というのは、宇宙全体の星の数に対して、人に 見えるだけの星の数、ということ。こういうことを思い知らされると、人はもっと 謙虚になるべきだ、と、宇宙に正されているような気がする。 ( 2002/05/25 月影 ) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ 編者ひとこと −沖縄の披露宴は面白い(も) −無線LANを導入するより、テレビ周りの配線を減らしたいなあ(お) −デジタルBS/CS導入するも、うちのテレビにD端子がない〜(月) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 「ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイル」に関する、ご意見、ご感想、 誤りのご指摘などは随時受け付けております。皆さんの声をお聞かせください。  宛先はこちら 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