━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━ MOON LIGHT EXPRESS Electrofile ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイル . * ・* [FILE: 000007] 2000,01,12 ★━━━━……‥‥ http://www2f.biglobe.ne.jp/~tukikage/ " *  . * tukikage@mqj.biglobe.ne.jp + . ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ※ このメールは購読登録された方に毎月一度送付させていただいてます。 ※ このメールは固定ピッチフォントで最適にご覧いただけます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━ 当サイトからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 2000年 明けましておめでとうございます! 今年も「ムーンライトエクスプレス」をよろしくお願いします。停滞していたコン テンツの追加、更新も、今年から積極的に行っていく予定ですので、今後のサイト 更新情報にもご注目ください。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ■ メーリングリスト登録者募集中! 当サイトでは、メーリングリスト(ML)を開設しています。MLとは、電子メールを 使用してインターネット上に擬似的な電子会議室を実現するものです。また、この MLは、当サイトWeb掲示板と連動しています。Web掲示板へ投稿された記事も、MLへ 同時に配信されますので、MLへ登録しておけば、Web掲示板のログもメーラで管理 でき、一挙両得です!参加登録は、次のアドレスで随時受け付け中!! ML参加・お問い合わせ mlexp-adm@y7.com 尚、このMLの詳しい内容はメールにて取り出せます。本文一行目に、 # guide と だけ書いたメールを、次のアドレスまで送付してください。このコマンドを送る際 "#"と"guide"の間には半角スペースが必要です。サブジェクトは無視されますので 何でも構いません。 MLコマンド受付 mlexp-ctl@y7.com ※ 詳細は、ムーンライトエクスプレスのWebサイトで紹介されています。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ■ あなたもSETIやってみませんか? 現在、地球外文明探査を自宅のパソコンで行えるSETI@homeという試みが米国を中 心に行われています。この参加の仕方は簡単。まず、SETI@homeのサイトへ行って 解析ソフトをダウンロードし、それを自分のマシンにインストールするだけです。 あとは、そのソフトが、自動的にデータを取得して解析してくれます。 SETI@homeの日本語サイトはこちら http://setiathome.ssl.berkeley.edu/home_japanese.html SETI@homeに関する詳しい説明なども書かれていますので、これを読んで是非参加 してみてください。どんなものか分かってきたら、次は、是非、当ムーンライトエ クスプレスチームへ参加しましょう。チームの概要の参照、参加は次のサイトから 行えます。お気軽にどうぞ。 http://setiathome.ssl.berkeley.edu/stats/team/team_36794.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━ イベント情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 21世紀の科学技術 … 夢と希望を語ろう 募集締め切りは今月末 政府内閣官房と科学技術庁が主催の「ミレニアムプロジェクト」の一環として、小 学生から社会人までの市民から「21世紀の科学技術 夢と希望を語ろう」をテー マに意見の募集を行っている。この企画の締め切りは2000年1月末となっている。 募集要項は下記の通り。興味のある方は参加してみてはいかが? ■ 募集テーマ/「21世紀の科学技術 夢と希望を語ろう」 このテーマに則して表題は作者の自由設定 ■ 募集対象及び方法/ (1) 小学生の部 … 400字詰め原稿用紙4枚(1600字)以内 (2) 中学生、高校生の部 … 400字詰め原稿用紙6枚(2400字)以内 (3) 一般の部 … 400字詰め原稿用紙10枚(4000字)以内 ■ 募集締め切り/2000年1月31日(月)(当日消印有効) ■ 選考及び表彰/審査委員会にて選考の上、内閣総理大臣より表彰予定 小学生の部 6名、中高校生の部 6名、一般の部 3名に優秀賞 うち 1名に最優秀賞を授与 ■ 発表/2000年4月(予定) ■ 問い合わせ及び送り先/ 氏名、住所、電話番号、年齢、職業(児童、生徒、学生の場合は学校名と 学年)を本文の前に明記して、郵送、ファックス、電子メールのいずれか の方法でお送り下さい。 宛先 科学技術庁「21世紀の科学技術 夢と希望を語ろう」意見募集係 〒100-0014 東京都千代田区永田町1-11-39 TEL: 03-3581-4411/FAX: 03-3581-4422 E-MAIL: iken21@sta.go.jp このイベントに関するお問い合わせは、当サイトでは受け付けていません。ご不明 な点がある場合は、上記問い合わせ先へアクセスをお願いします。 尚、この企画に関する詳しい内容は、下記のWebサイトにてご覧いただけます。 首相官邸 http://www.kantei.go.jp/jp/mile/index.html 科学技術庁 http://www.sta.go.jp/milennium ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━ 掘り出し図書特選 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 宇宙の起源 著者:チン・ズアン・トゥアン(監修=佐藤勝彦) 出版:創元社(「知の発見」双書) 価格:1,400円+税 ISBN:4-422-21109-9 世界各地に古くから伝わる宇宙の起源や観点などから、現代の宇宙科学に至る宇宙 論の全容が、カラー図解を踏まえながら分かりやすく解説されている。人は、これ までどのようにして宇宙を捉え、今後どのように接していくのか。 【 紹介:MLEXP. 】 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ 唯脳論 著者:養老孟司 出版:青土社 価格:1,600円+税 ISBN:4-7917-5036-5 生命科学の沸騰する現代、その最前線ともいうべき研究分野は「脳」である。私た ちは普段ものを見て感じているのは、実は全て私たちの脳がそう感じているという ことなのである。現代人は脳の中に住んでいる。脳は檻なのか、それとも最後に残 された自然なのか。 【 紹介:MLEXP. 】 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ 生命のナゾはどこまで解けたか 新しい生物学 第3版 著者:野田春彦/日高敏隆/丸山工作 出版:講談社(ブルーバックス) 価格:1,040円+税 ISBN:4-06-257241-9 遺伝子レベルから見た共通原理で生物全体をとらえることができるか?動物、植物 から細菌まで含む生命共通の原理を追究していちじるしく発展した分子生物学。そ の最新の成果を踏まえながら、DNA、細胞、個体、生物社会、進化、生態系まで を簡潔にわかりやすく解説。 【 紹介:MLEXP. 】 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ■ 推薦図書をご紹介ください!! このスペースでは、毎月皆さんがお勧めする図書を紹介していきたいと思います。 皆さんが読んだ中で、これは良い!と思ったもの、また、まだ読んでないけど気に なる本などをご紹介ください。当サイトのテーマに則していれば、解説書のような 読み物でもSF小説でもジャンルは問いません。また、新刊でなくとも構いません。 情報募集アドレスはこちら tukikage@mqj.biglobe.ne.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━ 投稿ノベルズ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ● 夢の彼方に (2)      【 作:ジーン 】 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 「あなたも見てきたのですね、玄多さん。」 見てきた?確かに、何か夢の中で見ていた気はする。が、思い出せない。自分では 分かっている気がするのだが、その問いを菊池界にぶつけてみる。 「一体何を?」 「夢ですよ。正確には、玄多さんが今、夢だと思っている現実、です。」 何を言っているのか分からない。いや、これも頭の奥では理解できているような気 分だが、どうもすっきりしない。 「いずれ分かります。玄多さんと私は、同じなんですから‥‥」 菊池界はそう言い残して立ち去る。ドアが開くと、入れ違いで樋口とドクターヨハ ンが入ってきた。樋口は玄多と同じく、地球人類レスキュー計画の要員応募の選考 で選ばれた同僚で、ヨハンは船内医療主任として採用されたドクターである。 「君の発作も困ったものだね。最近、前にも増して一段と頻繁に起こるようになっ てきていないかい?一時的な精神錯乱との診断だが、これは一時的どころじゃない よ、玄多くん。」 精神錯乱とは心外だ。発作で気を失うのは精神的な問題だというのか。樋口が安定 剤を差し出す。 「この薬もあまり効果ないのかしら?もしかしたら、何か別の病気なんじゃないん ですか?ドクター。」 「MRIでも脳に物理的な異常は認められないし、軽い神経疾患の一種ならその薬 で十分なんだがね。まあ、もう少し様子を見て考えよう。」 十数年前から、地球生物全体に及んで同じく原因不明の病気が急増している。その 症状は、一時的に気が狂ったようになり、そのまま自殺行為に出るというもの。こ の症状が一度発現した者は、それから徐々に生殖本能が失われていく。地球上に生 物が殆ど絶えてしまったのも、実はこの病気によるところが大きい。玄多もそれか と疑われたが、自殺行為には出ないし性欲も至って普通の男であった。 「樋口。」 「何?」 「俺、寝ている間、ずっとここにいたか?」 「寝ながら外に出るの?ずっと見てはいなかったけど、私がここにきたときはちゃ んとベッドにいたわよ。」 「そう‥‥」 なぜか急に寝ている間の自分の存在が気になった‥‥               *         * LH号が地球を発ってから7年。以来、目指すべき「神」の痕跡はまるで見あたら ない。当然といえば当然。そもそも、いるのかいないのかさえ分からない存在、仮 にいたとして、それがどんな形態で存在しているのかも分からない「神」を探す旅 など、まして、それを求めて宇宙の果てを目指すなど無謀という他ない。しかし、 人間にそんな計画を思い起こさせているのもまた「神」だとするなら、今こそ自ら に、その存在をかけて挑戦してみろ、という誘いであるとも思える。 天井のモニターに現在の外の様子が映し出されている。遠くに宇宙塵が無数に集ま ったアステロイドが見えている。LH号の自動航行装置は、あのアステロイドを避 けて、すぐ側のC級(太陽系の火星程度)惑星の重力圏内を飛行しているようであ る。これからこの惑星を半周ほど回って方向転換、スイングバイの準備をしている といったところか‥‥ 「玄多くん。」 再び樋口が部屋に入ってくる。 「菊池くん見なかった?」 「菊池界なら、さっきまでここにいたけど。さっきすれ違ったろ?」 「そうだったかしら。アート教授が菊池くんを探してるんだけど、部屋にいないの よね。もう一度探してみるわ。」 彼女がいそいそと部屋を出ていくと、また部屋に静寂が戻る。 アート教授は、この地球人類レスキュー計画の発端となった人間だ。生物進化学の 権威でもあり、国連の科学技術開発の執行委員長でもある。彼の口から「神」とい う言葉が出てきたのは、ある日突然だった。10年前、まさに、神のお告げがあっ たかのごとくこの計画推進を提唱し、それから1年で計画を可決。この準光速宇宙 船LH号も、設計開発2年というスピードで完成をみた。人類も追いつめられると 本領発揮、というところか。 そして、そのアート教授の助手としてこの計画に準首謀者として参画してきたのが 菊池界だ。彼の身辺や経歴については不明な部分が多い。菊池界は、何故か玄多の 周囲をよくうろついている。理由は分からない。 モニターには、さっきまでそこに大きく写っていた惑星が小さく映っていた。LH 号はこれからまた亜高速までの加速が始まる。 さて、一眠りするか‥‥               *         * ‥‥頭に何か重みを感じる‥‥手で頭の上にのしかかるものを払いのけると、バサ バサッと何か書類の落ちる音が響いた。はっと目が覚める。 落ちたのは卒論とレポート用に脇に積み上げていた書籍類だった。玄多は自分が大 学の図書館の一角にいることに気づく。 「ああ、また寝てしまった‥‥」 今日も、卒論は一歩も前へ進まなかった。玄多は、いつものようにめぼしい部分の コピーを取り図書館を出ると、コピーに使った研究室のコピーカードを返すために 研究室へ向かう。外はすっかり暗くなっていた。何だか最近、時が過ぎるのが異様 に早く感じる。この現実世界に自分が生きている時間が、妙に短くなっているよう な感覚。研究室にはまだ灯りがあった。 「ちーす。」 研究室の中には誰もいなかった。灯りがあるということは、誰か作業をしていると いうことだろう。トイレかな。 「玄多さん、まだいらっしゃんたんですか?」 後ろから聞き覚えのある声。入ってきた男は菊池界だ。 「おまえこそ、まだいたのか。」 「ええ、ちょっと気になることがありましてね。」 他の学生はとうに帰っているのに、一人で熱心なものだ。コピーカードを元の棚に 戻す。ふと教授のデスクのパソコンを見るとメールが届いていた。研究室共用のメ ールなので、一応目を通す。どうも、誰かのプレプリント(学会に発表する前、事 前に同僚や同業者に流すレポート)らしい。 ―― 生物進化の方向性と合理化による生物淘汰の考察 生物進化に方向性などあるのだろうか?あるとすれば、それは誰が決めているんだ ろうか?それはなぜそうなっているのか?なるほど、この研究分野には未解決部分 が多いだけに哲学的要素が多分に入る余地がある。分子生物学がここまで進んでも なぜそうなのか?という問いに答えることはできまい。 「面白いことが書いてありますか?」 「え、まあね。運命ってあるのかな、と思って。」 「運命、ですか。」 菊池界は、時々まるで玄多の考えていることを見透かしているような感じがするこ とがある。ただ優秀な学生というだけでなく、何か奥に秘めたものがあるような男 である‥‥ 「玄多さんの理解を支配しているのは玄多さんの意識ですから、運命も自身の意識 で支配されている、ともいえなくもないんですよ。」 「ああ、なるほどね。」 「ただ、それを、今私が操作しているこのES細胞のように外からの力で運命づけ られるか、自分の意志でそうなろうとするか、の違い。」 「意識は意志なのか‥‥」 「そうありたい、と願いますよ、私は。」 【 シリーズ 1999/12/24 より連載 】 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ■ 投稿作品募集!! 皆さんが普段思う不思議を、小説やエッセイなどにまとめて披露してみませんか? 読切、連載は問いません。ここで掲載された作品は、当サイトの [未知SF通信] へ 随時掲載していきたいと思います。皆さんの投稿をお待ちしています! 投稿先アドレスはこちら tukikage@mqj.biglobe.ne.jp ▼ 作品投稿の際のお願い 作品を掲載する際、作者名を記載させていただきますが、これは本名である必要は ありません。匿名希望の場合でも、ハンドル、ニックネームなどを書き添えていた だきたいと思います。 また、作品は、テキストファイルに保存して、添付ファイルとして投稿していただ くのが望ましいです。メーラで直接編集しますと、やや文体が崩れたり、SIFT-JIS 固有文字が化けたりすることがあります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━ 今月のお勧めサイト ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 電脳科学倶楽部 URL: http://www.melco.co.jp/event/kagaku/ 小学生から大人まで分かりやすく楽しめる科学情報サイト。現代の先端科学の解説 や日本学生科学賞受賞作品の紹介などがある。自然科学になかなか入れない一般の 方にはお勧めのサイト。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ JSTバーチャル科学館 URL: http://s-kurukuru.jst.go.jp/ 科学技術振興事業団制作の「科学と技術のおもしろサイトサイエンスくるくる」。 生命、地学、宇宙、機械などの身近な疑問を解決してくれる。内容は学術的な固い ものでなく、一般の人にも馴染みいやすいトピックと解説で自然科学に触れられて いる。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ ふたたび月へ URL: http://moon.nasda.go.jp/index.html 月の成り立ち、月の謎から、月探査計画やその歴史など、月に関する様々な情報が 見られる。その他、月探査の最新情報やQ&A、クイズなど。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ■ 特選サイト募集!! このスペースでは、毎月皆さんのお勧めサイトをご紹介していきます。皆さんが、 ここぞ!と思うサイトをどしどしお知らせください。その際、簡単な紹介文も添え ていただけると幸いです。 情報募集アドレスはこちら tukikage@mqj.biglobe.ne.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━ コスモスコープ 2000年1月版 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ ヒト・ゲノムの90%のDNA塩基配列を解析《2000/01/11》 米国Celera Genomics 社は、1月10日、ヒト・ゲノムの90%のDNA塩基配列が同社の データベースに登録されたと発表した。このうち、人間の生体形成に関わっている と考えられている遺伝子レベルでは、この時点で97%の解析を完了していることと なった。Celera社は今年夏までにヒト・ゲノムの解析を終了するとしている。これ は、1989年から進められている国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」が2003年から 2004年を目処に解析を進めていることを考えると驚異的なスピードといえる。 先月、人の第22番染色体が解析され、先日も日本とドイツの研究グループが21番染 色体の解析を来月に終了すると発表した矢先のCelera社の発表に、関係者は戸惑い と驚きの表情を隠せない。 【 ヒト・ゲノムとは何か? 】 昨今の遺伝子ブームで頻繁に聞くようになった「ヒト・ゲノム」という言葉。これ は一体何なのか?「ヒト」とは、当然「人間」のことである。問題は「ゲノム」と いう言葉の方。人間の体は、およそ60兆個の細胞から形成され、その一つ一つ、或 いは全体の遺伝情報を担っているのがDNA(デオキシリボ核酸)である。そのうち 人間の体の形成に影響していると考えられている部分を、特に「遺伝子」と呼んで いる。このDNAは、普段は細胞核の中で巻き取られた状態の「染色体」として存在 している。この染色体は常に2本対のペアとなっており、人間の場合、全部で23対 (46本)ある(うち2本は性染色体)。この全体の半分、つまり23本の染色体に乗 るDNAの遺伝情報を指して「ゲノム」と呼ぶ。 現在、米国を中心に、英国、フランス、日本などの研究機関が共同でこのゲノムを 解析しようという国際プロジェクト「ヒト・ゲノム計画」があるが、この計画では 2004年頃に全ての解析を完了することを目標としている。ゲノムを解析する方法と して、まず「シークエンサー」という遺伝子の塩基配列を自動的に読みとる装置で 読み込みを行う。塩基配列を読んだだけでは、遺伝子を解析できたとはいえない。 そこから、どの情報を持つ遺伝子が染色体のどこに位置するのか、という地図作り (「マッピング」という)をしなければならず、これを行うのは概ねスーパーコン ピュータだ。今回、Celera社にまんまと出し抜かれた形となった国際プロジェクト は、その計画の見直しを余儀なくされている。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ★ ヒト細胞から胚育成《2000/01/06》 中国新華社通信などによると、上海市遺伝子操作研究センターの成国祥博士らのク ローン共同研究グループが、ヒトの臓器移植に用いる臓器を、クローン技術によっ て生み出すための基礎的な技術開発に成功した。これは、卵子になる前段階の卵母 細胞から核を取り出し、患者の体細胞を移植、一定の処理を施し、その胚の生育に 成功したという。この技術により、移植用の皮膚、軟骨、心臓、肝臓などの特定の 臓器にターゲティングしてそれを培養することが可能となり、これは、死体からの 移植につきものの拒絶反応も少なく、その応用の可能性は大きい。 人へのクローン技術の応用はクローン人間を作ることにもつながってくる為、ヨー ロッパなどの国では、それを法律で禁止している。人間を複製することは、たとえ その一部であっても、人の命を軽く見ているなどの問題があるという見方は多い。 【 クローン人間の可能性 】 胚性幹細胞(ES細胞)などのどんな臓器や組織にもなる可能性のある人の胚研究 をどう規制するか、という問題は、これまでも討議されてきた。今回、日本でも、 科学技術会議生命倫理委員会のヒト胚研究小委員会に11日、「クローン技術を使っ た人の胚づくりは原則として禁止する」という案が出されている。提出された原案 どおりに決まれば、上記のような、人の細胞だけを使う核移植による胚づくりは、 クローン人間ではないES細胞の生成を目的にしたものであっても認められないこ とになる。 万能細胞ともいえるES細胞を作るには、体外受精で余った受精卵を使う方法と、 体細胞を核を抜いた卵子に核移植する方法があるが、今回の原案では、クローン人 間につながりかねない点などを重視して禁止、当面は余った受精卵を使う方法に限 定した。ただ、核移植は、拒絶反応のない臓器づくりの可能性も秘めているため、 必要に応じて見直すとしている。 今後、クローン技術を使った胚作りについては、医療面でも様々な可能性が拡がる ものと見られている。クローン人間が作られる可能性がある、という理由のもとで それらの可能性の芽を潰してしまうことは有意義でない、という見方も多くあり、 倫理の在り方もここで問われてきている。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ★ ハッブル宇宙望遠鏡リニューアル《1999/12/27》 米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル「ディスカバリー」は25日夜(米国東部 時間)、修理を終えたハッブル宇宙望遠鏡がペイロードベイ(貨物室)から無事切 り離され、再び宇宙へ送り出された。ハッブル望遠鏡は12月21日に、シャトルのロ ボットアームによって捕獲され、3日間に渡って宇宙飛行士がそれぞれおよそ8時 間に及んだ船外活動を3回、計24時間に渡って行った。これによって、故障してい た6基のジャイロスコープ(姿勢制御装置)の交換とともにコンピュータシステム や計器も新型のものが搭載された。 今回の修理は、宇宙飛行士四人が二組に分かれて交代で行われた。船外活動時間は 予定を大幅に上回ったが、予定されていた作業は全て完了したとのこと。この修理 で、新しい送信機、電池を組み込まれ、記録装置もテープを使用するものから半導 体を使用する最新型のものに交換された。ハッブル宇宙望遠鏡は、今回の修理で、 これまでの最長となる約2ヶ月の休止期間をとったことになる。観測の再開は2000 年の1月から予定されている。リニューアルされたハッブル宇宙望遠鏡の今後の活 躍が期待される。 【 ハッブル宇宙望遠鏡が変えた宇宙の誕生日 】 現在、宇宙に於ける天体同士は、全体としてお互いに離れつつある、つまり膨張し ていることが知られている。これは、かつて宇宙はただ一点に集中した状態であっ たと考えることができる。つまり、その時点こそ宇宙の起源、誕生日である。この 誕生日は、その膨張率(ハッブル定数と呼ぶ)を使って計算される。 これまでの説では、宇宙の年齢は約150億年とされていた。ところが、ハッブル宇 宙望遠鏡の観測データから得られた最新の膨張率で計算したところ、宇宙の年齢は 約120億年という結果が出た。宇宙の年齢を知ることは、宇宙に存在する様々な天 体現象を考える上で重要となってくるもので、宇宙の成り立ち全体を議論する宇宙 物理学に与えた影響も大きい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━ 今月のコラム ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 成人の日。今年からハッピーマンデーとやらで月曜に回って3連休となった。街に 出てみると、そこかしこに晴れ着姿の女性や、ぎこちないスーツ姿の若者の姿を見 る。おそらく成人式の帰り、久々に会った同級生を懐かしむ一時... 私にも成人式はあったのだが、かつて慣れ親しんだ人に会うと、確かに自分は過去 に存在していたのだな、と思うことができる。私も相手を知っているし、相手も私 を知っている。「変わったね」などといってくれる人もいるが、それは昔の私を知 っていて出てくる言葉である。そう、自分は他人によって認識されていて、これは 今も昔も変わらない。とすれば、当然今の私を知っている人で、仮に10年も会わな かった後に再会すれば、私を懐かしいと思ってくれるのだろうか。 懐かしい、という概念は、私たちが時間を連続して認識している証拠でもある。つ まり、過去のみ記憶していくという私たちの脳の構造が、「懐かしい」という概念 を成立させている。もし、ディジタルに自由に時間を前後できたりすれば、私たち はいつの時代も対等に認識するのだろう。遠い過去ほど懐かしいと感じる。そして いつしかその記憶も存在しない時間がある。私たちには始まりがあって、そこから 記憶が積み重なって今に至っているということだ。始まりより以前もまた、私たち は懐かしむことはできない。 偶然にして私たちは始まり、私たちの時間を過ごす。その時間を共有して存在して いる家族や友人。これらの巡り合わせは最初から決まっていたものではない。ほん の偶然である。そうでない可能性、つまり私が今ここに存在しない可能性もあり得 たのだが、偶然にして同じ時を過ごすことになった私の取りまきとその関係。仏教 の考え方で、人と人が出会うのは、その人同士に「縁」というものがあるからだと されている。 数年前、私の成人式の講演で、「縁」を大切にしよう、という内容の話があった。 これはおそらく、出会った友人を大切にしよう、ということで、「縁」そのものは 私たちの考えでどうにかできるものではない。むしろ、「縁」によって操作されて いるのは私たちの方ではないか、とも思えるが。 (2000/01/10 管理人 月影) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイルは、「まぐまぐ」を利用して配信 されています。メール配信先の変更、また配信の中止は、「まぐまぐ」のサイト、 及び、ムーンライトエクスプレスWebサイトにてできます。《 ID:0000016842 》 http://www.mag2.com/ http://www2f.biglobe.ne.jp/~tukikage/info/mm.htm ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイルに対する、ご意見、ご感想などは 随時受け付けております。また、記事の内容に誤りなどありましたら、ご遠慮なく どんどんご指摘ください。皆さんのご意見をお待ちしています。 ご意見,ご質問受付 tukikage@mqj.biglobe.ne.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━ 発行/編集: ムーンライトエクスプレス Web URL: http://www2f.biglobe.ne.jp/~tukikage/ E-Mail : tukikage@mqj.biglobe.ne.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━