━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  MOON LIGHT EXPRESS Electrofile  ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイル . * ・*  [FILE: 000011] 2000,05,21 ★━━━━……‥‥  http://www.mlexp.com/ " *  . *  electrofile@mlexp.com + . ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ※ このメールは購読登録された方に毎月一度送付させていただいてます。 ※ このメールは固定ピッチフォントで最適にご覧いただけます。 ■ INDEX ▼ 掘り出し図書特選  ・科学にわからないことがある理由  ・脳とクオリア〜なぜ脳に心が生まれるのか ▼ 番組特選  ・NHKスペシャル 「世紀を越えて・いのち・生老病死の未来」 ▼ 今月のお勧めサイト  ・Nature Genomics Menu  ・文部省宇宙科学研究所(ISAS) ▼ 投稿ノベルズ  ・夢の彼方に(6) ▼ コスモスコープ  ・国際宇宙ステーション失速!?  ・21番染色体解読完了  ・この宇宙は平坦!? ▼ ムーンライトエクスプレスからのお知らせ  ・ご紹介リンク  ・あなたもSETIやってみませんか?  ・メーリングリスト登録者募集中!  ・MLEXP. エレクトロファイル 登録解除/アドレス変更について  ・ご意見、ご感想受付 ▼ 今月のコラム ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  掘り出し図書特選 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 科学にわからないことがある理由 著者:ジョン・D・バロウ(訳=松浦俊輔) 出版:青土社 価格:2,800円+税 ISBN:--- 人の歴史において科学は常に進歩し、人類に新たな知識を吹き込んできた。そして 今世紀は、力学の考え方の根本から変革し、今まで神の領域とされていた生命科学 にもどんどん踏み込んでいる。将来は、科学によって人類は全てを知ることになる のだろうか。科学がその深淵まで達したとしても、さらに不可能な領域があるかも しれない。そんな科学の限界に迫る、人知そのものを問う一冊。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ 脳とクオリア〜なぜ脳に心が生まれるのか 著者:茂木健一郎 出版:日経サイエンス 価格:3,200円+税 ISBN:4-532-52057-6 質感のなかでも極めて主観による「クオリア」という概念。これは一意にシンボル 化されるものではない。そうした意識的、精神的観念を分子生物学で語るには、あ まりにその解釈の手法にギャップがある。今の科学で本当に人の心を語れるのか、 また、そうしたクオリアを説明できるのか、というところから、新たな科学のパラ ダイムを見出そうという試みも感じられる。  関連サイト : http://www.qualia-manifesto.com/index.j.html ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ 21世紀を動かす科学10大理論 著者:矢沢サイエンスオフィス=編 出版:学習研究社 価格:1,456円+税 ISBN:4-05-601424-8 近年注目されている科学トピックのの中でも、特にまだ異端の域に近い、逆にいえ ば新たな科学のパラダイムの候補となる理論が選ばれて、それらのエッセンスが紹 介されている。ペンローズの量子脳理論に関するインタービューの他、構造主義で 考える進化論、超統一理論、複雑系の科学、ドーキンスの利己的遺伝子の理論など。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  番組特選 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ NHKスペシャル 「世紀を越えて・いのち・生老病死の未来」  不定期(月1〜2回)日曜日 21:00〜 (NHK総合)  ( 再放送 本放送の週、もしくは翌週の月、火曜日深夜 0:15〜 ) 近年のバイオテクノロジーの発達は、医療技術を高度にするだけでなく、人類社会 全体に大きな影響を及ぼし始めている。遺伝子が次々と解明されていく今、医療は もはや医者の勘や経験の世界ではなくなり、より合理的に治療が行えるようになる ことが期待されている。その反面で、人としての存在意義を問う倫理的問題や将来 人という種が孕んでいるリスクについても克明に描かれており、両刃の剣を手にし た人類の将来について考える内容となっている(21日までに 3回放映)。  関連サイト : http://www.nhk.or.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  今月のお勧めサイト ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ Nature Genomics Menu  http://www.naturejpn.com/newnature/biomed/genomics/index-j.html 英国の科学誌『Nature』に掲載された論文のうち、特に人ゲノム解析に関するもの がリストアップされている。多くが英語論文だが、日本から発表された論文は日本 語で読むことができる。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ◆ 文部省宇宙科学研究所( ISAS )  http://www.isas.ac.jp/ 今月頭にリニューアルされた。従来のテキストベースの淡泊なイメージから、今度 は一般にも親しみやすい視覚的なデザインが施されている。宇宙科学研究所(ISAS) は、地球観測や惑星探査を中心に様々な宇宙科学調査を行っている機関で、宇宙開 発事業団(NASDA)とは区別される。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  投稿ノベルズ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ● 夢の彼方に (6)      【 作:ジーン 】 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 「玄多さん、痴漢には気を付けてといったじゃないですか。」 「何をいってるんだ?」 今、玄多の目の前にいる院生は、玄多の後輩の菊池界。いや、後輩の筈の菊池界。 しかし、それとは違う感覚が玄多の脳に甦ってきた。ここは教室、いや、地球人類 レスキュー計画の為に建造された宇宙船LH号の中? そのとき、急に教室が暗くなり、菊池界と玄多だけが、その暗闇に浮いている感じ になった。そしてその瞬間、玄多の頭のなかで何かが閃くように、別の自我が目覚 めるのを感じた。 「菊池界、お前は、アート教授の助手の!?」 「なるほど。玄多さんもやはり、この現象レベルで上位の自我を認識できるわけで  すね。やはり私と同じだ。」 「一体どういうことだ!?」 玄多は菊池界に近寄ろうとするが、まるで泥沼か流砂の中をもがくような感覚で、 一向に近づくことができない。 「玄多さん、あなたは他の人類と違う運命を背負っていらしゃるのですよ。」 「違う運命?」 「そう。10年前、悪夢のウィルスが世界中に万延しているにも関わらず、玄多さ  んは平気だった。しかし、あなたを検査した結果、あなたにも例のウィルスが感  染していることが分かったのです。」 「何だって?」 「感染はしていましたが、発病しない。発病しないどころか、むしろそのウィルス  は、玄多さんの体内で生体に有利な働きをしていることが分かりました。」 「有利?」 「分子生物学をご存知の玄多さんなら、細胞分裂の機構にはご存知ですね。」 「ああ。」 「細胞は分裂する度に、その設計図となるDNAの長さを縮めていきます。その部  分をテロメアといいますが、このテロメアが全てなくなると、細胞分裂はできな  くなり、その細胞は死を迎えることになります。」 テロメアは、細胞の死を運命づけている、といわれている。ただ、仮に、傷ついた 細胞が死を迎えることなく生き続けたとしたら、生体そのものに致命的となること がある。その典型的病気がガンだ。 「ところが玄多さん、あなたの体内でそのウィルスは、このテロメアを延長してい  たのです。」 「しかし、それなら俺は健康体ではいられなくなるはず……。」 「大抵の人間はそうです。ところが玄多さんは違った。  普通に生活していれば、呼吸や日光の直射によって、DNAは 徐々に傷ついて  いくものだということは、玄多さんもご存知のはずです。」 「そんなDNAで細胞が複製されて生きながらえていたとしたら、いずれ命に関わ  ってくる……。」 「そう。しかし、その細胞が無傷なら話は別です。玄多さんの場合、紫外線や活性  酸素などによって傷つくはずのDNAが、ほとんど無傷であることが分かりまし  た。」 「何!?そんなこと、普通の人間ではあり得ない。」 菊池界は、まるで何もかも知っているかのような笑みを浮かべた。 「普通の人間では、ね。玄多さん、あなたは普通の人間ではないのですよ。  そう、いわば神に選ばれた人間、私はそう思えます。」 「お前は神を知っているのか!?」 「さあ、どうでしょうね。神に関しては、玄多さん、あなたの方がご存知なのでは  ないですか?」 菊池界がそういった瞬間、あたりの暗闇が一瞬にして眩しい黄色い光に変わった。 玄多はおもわず手で目を覆う。そのまま、玄多の意識は遠のいていった…………               *         * 「………………くん…………」 「…………玄多くん…………。」 耳の奥から声がする。 「…………起きて、玄多くん。」 玄多は体を揺すられるのを感じた。 何だ、また別の夢を見ることになるのか…………。 目を開けると、見慣れた女の顔があった。 「樋口、か。」 「良かった、気づいてくれた。」 そこはLH号の医務室。ドクターヨハンも一緒だ。 「ドクター、俺は……。」 「大丈夫だよ、玄多くん。君の発作の原因も分かった。どうも君は、このレベルよ  り下位のレベルの現象世界へ落ちていたんだそうだ。そのとき、こちらの世界の  君の意識はなくなってしまうらしい。」 「体は、この世界から消えないのか?」 「多分、夢の世界みたいなものだと思うんだけどね。こういうことはアート教授の  方が詳しいかもしれないね。」 「アート教授……。」 そう、玄多は人類が滅亡をむかえようとしているこの世界とは別の世界、下位レイ ヤの現象世界というところへ落ちていた。その間、玄多は、その世界の存在として 振る舞い、基本的に元の世界の玄多の意識はないらしい。 そういえば、玄多はどうやってこの世界へ戻って来られたのか? 「樋口、俺達……。」 「思い出したみたいね、あの世界からどうやって戻ってこられたのか?でしょ。」 「あ、ああ。確か、変な光る物体に捕まって……。」 「私も、もう戻れないかと思ったわ。あの光は、やっぱりリプレッサーだったらし  いんだけど、リプレッサーに押さえ込まれたら、多分私もあなたも、永遠にあの  世界、つまり下位レベル世界の存在として生きていくことになってたわね。」 「それで……。」 「彼が助けてくれたのよ。」 樋口が指さした方向に、窓の外を眺めている一人の青年か立っていた。 「菊池界、あいつが?」 「そうよ。  世界がレイヤごとに独立して多元化、階層化していることに気づいたのも彼よ。  論文はアート教授の名前で発表されてるけどね。実際それを数学的に予想して、  実際その移動方法を考案したのも、菊池くんらしいわ。」 菊池界、何者なんだ?最初は、ただのアート教授の腰巾着かと思っていたが、実力 の本質は奴の方にあったのか。 菊池界は、窓の外の何かに気づいたようなしぐさをした後、こちらを振り向いた。 そして、いつもの不気味な薄笑いを浮かべる。気持ち悪い奴だ。 「菊池界、さっきの話の続きをしないか。」 その言葉に、樋口もドクターもやや戸惑った様子。 「さっきの話って、いつ菊池くんと話なんかしてたの?」 菊池界だけは驚いた様子もなく頷いた。 【 シリーズ 1999/12/24 より連載 】 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ※ 投稿方法、その他投稿作品に関するお問い合わせは次のアドレスまで。 投稿作品お問い合わせ先 electrofile@mlexp.com _/_/_/ [PR] _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/  ■■ムーンライトエクスプレスWebサイトのご案内■■  ●投稿ノベルズの作品は、Web“シアター”で公開しています。  ●“生命宇宙論”を体験できる“Lifesphere”の試運転を開始しました。  ●“カフェ”でMLの内容が閲覧できるようになりました。  ◎お気軽にご来訪ください。-> http://www.mlexp.com/index.htm _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ [PR] _/_/_/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  コスモスコープ 2000年5月版 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ 国際宇宙ステーション失速!?《2000/05/06》 米国ニューヨークタイムス紙で6日、現在国際プロジェクトとして建設中で、地球 軌道を周回中の国際宇宙ステーションが、太陽活動活発化の影響などで、その飛行 高度が下がりつつある、と報じられた。 人工衛星など、宇宙空間を飛行するものは、そこに浮遊する塵や粒子によって抵抗 を受け徐々に減速する。特に、この国際宇宙ステーションは、地上約340kmという 比較的低空を飛行しているため、酸素などの大気の粒子の影響もわずかながら受け でいる。また、今年は11年周期で訪れるという太陽活動の極大期ということもあり、 大気が暖められて粒子が宇宙空間に飛び出し、周回軌道付近の粒子の密度もいつも の10数倍にもなっているという。 現在宇宙ステーションの速度は徐々に落ちており、今年2月以降毎週 2.4〜3.2km/s も減速するまでになっている。宇宙ステーションの飛行制御は、ロシアから打ち上 げ予定のモジュールで行われる予定だが、資金難や打ち上げの失敗などによりその 接続が遅れている。この為、現状の宇宙ステーションでは自力で高度を上げること ができない。この状態が長く続くと、飛行軌道そのものが制御できなくなるおそれ がある為、米国航空宇宙局(NASA)は、応急処置として19日に打ち上げられたスペー スシャトルでその高度を40km程上げて、来月に予定されている飛行制御モジュール の接続までを凌ぐ予定。  関連サイト : http://jem.tksc.nasda.go.jp/ 【 太陽活動の極大期とは? 】 太陽のところどころに黒い点のようなものが観測されることがある。これは、太陽 の対流層で周回している磁力線が光球面を突き抜けることで、その部分の温度が周 囲に比較して低くなることで現れる現象で、一般に「黒点」、或いは「太陽黒点」 と呼ばれている。 この黒点の数は、統計的に、大体11年周期で増減を繰り返していることが分かって いる。黒点の数が増えるということは、対流層の磁力線がより乱れているというこ とで、このとき太陽の活動は活発になっている、とされている。今年2000年は丁度 この黒点が最も多く現れる極大期にあたる年なのである。 極大期には、太陽表面でフレア(磁力線がねじ切れることで発生する爆発現象)が 頻発し、太陽風(太陽から発せられているプラズマ粒子)が激しく乱れる。この影 響で、太陽からの放射線が地球付近にも様々な問題を与えるといわれており、その 一つに、人工衛星や宇宙ステーションを制御している電子機器に何らかの異常が現 れるのではないかという懸念もある。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ★ 21番染色体解読完了《2000/05/09》 連日のように報じられているゲノム解析のニュースだが、また新たに染色体の解析 が完了したと、18日の英科学誌『Nature』で発表された。これは、人間の全染色体 23対のうちの第21番目の解読が完了した、ということで、日本とドイツの共同チー ムによる成果である。この21番染色体には躁鬱病やダウン症、また難聴などの病気 に関する遺伝子があるとされている為、その治療や新薬開発への応用が期待されて いる。 染色体の解読完了は、昨年の22番染色体に次いで2番目である。この成果は来月に も公表される予定だ。これは国際プロジェクトとして現在進められている「ヒトゲ ノム計画」の一環であり、全ての解読が完了すると、様々な病気や人の体そのもの に関する情報がデータベース化できる。これは、医療やバイオテクノロジー分野で の幅広い利用が望める反面、人体改造や人の体がモノ扱いされるという点で、倫理 的な批判も多くある。 【 解読完了したんじゃなかったの? 】 先日、米バイオテクノロジー企業のセレラ・ジェノミクス社で、ヒトゲノムの解読 を完了した、と発表された。しかし、国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」のまと め役であるフランシス・コリンズ氏(米国ヒトゲノム研究所長)は、9日にカナダ のバンクーバーで開催されたゲノム研究者の国際会議で「完全な解読ではない」と セレラ社の発表を批判した。 ヒトゲノムの解析では、全部で23対ある人の染色体のどの部分にどのような機能が あるかという、遺伝子の完全な“地図”を作ることが最終的な目標となっている。 国際プロジェクトでは、順を追ってゲノムの解読を進めており、現在全体の約70% の解読を完了している。セレラ社は、その遺伝子の断片部分を読み終えたにとどま っており、それを地図として構築するには至っていないようだ。しかし、なぜその ような段階で、同社は「解読完了」などと発表したのか? 遺伝子の研究は、病気の治療や薬の開発に直接応用可能であり、また人の個性や体 質などといった個人情報まで分かる可能性のある、非常に応用範囲の広い分野なの である。既にこの分野で巨大な市場ができつつあり、遺伝子に関する特許を取るこ とは、この市場で勝ち残っていく重要なカギとなる。セレラ社の会長であるクレー グ・ベンター氏は「医薬品開発には3〜5億ドルはかかる。コスト回収の為に遺伝子 の使用権を特許で守るのは当然」と主張している。 実際、このようなベンチャー企業の遺伝子分野への参入によって、ゲノム解析は急 激に加速した。国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」でも、当初2005年に解読完了 を予定していたが、近年の解析競争によって2003年までの繰り上げを余儀なくされ ている。コリンズ氏は、このような企業の役割を評価しながらも、一方で、解析デ ータを公開して、その情報を誰でも利用可能にすることがプロジェクトの目標であ るのに、企業にその情報が占有される可能性がある、という懸念を示している。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ★ この宇宙は平坦!?《2000/04/27》 現在、宇宙の将来を予測するモデルとして、永遠に膨張する「開いた宇宙」、いつ かは収縮に転ずる「閉じた宇宙」、そして膨張も収縮もしなくなる「平坦な宇宙」 の3つが考えられている。今回、ローマ大学などの国際チームの気球観測の結果に よって、この宇宙は「平坦」であるということが裏付けられたという。「平坦」と いっても、実際には、ピタリとその膨張が止まるのではなく、緩やかに膨張を続け るようなものを指して「平坦」としている。 今回の国際観測は「ブーメラン」と称されるもので、1998年2月に南極大陸で高度 約38kmに気球を上げて様々な方向からの「宇宙背景放射」を精密に観測した。宇宙 背景放射とは、宇宙の全て方向から降り注いでいるマイクロ波のことで、宇宙がか つて熱い“火の玉”だった頃の名残であるといわれている。この放射から、初期宇 宙の10万分の1ほどのわずかなゆらぎ(※)を分析した結果、その強度分布が「平坦 な宇宙」のモデルから導かれる予測と一致していた。これは、宇宙が誕生直後に急 激に膨張をしたという「インフレーション理論」に基づくものである。  ※ゆらぎ  宇宙初期の温度分布は完全に一様ではなく、わずかだが高い部分と低い部分が  あったことが観測によって分かっている。これは、同時の物質密度が一様では  なかったことを示しており、これを初期宇宙の“ゆらぎ”と呼んでいる。 【 宇宙の平坦性問題 】 宇宙が膨張するか収縮するか、ということは、宇宙に存在する物質の総量で決まる。 収縮と膨張の中間にある(平坦な宇宙となる)とされる密度を「臨界密度」と呼び、 現在この宇宙で観測される物質の密度と臨界密度の比(観測される物質密度を臨界 密度で割った値)で、宇宙の将来を議論する。この比このとを、宇宙の密度パラメ ータ「オメガ」と呼ぶ。 つまり、オメガが1であれば「平坦な宇宙」、1より大きければ収縮に転ずる「閉 じた宇宙」、1より小さければ膨張し続ける「開いた宇宙」ということになる。と ころで、現在観測されている物質の量からは、オメガの値は0.01程度と導かれる。 この値は「開いた宇宙」を示しているが、まだ観測されていない物質も多くあると 考えられ、実は、オメガはほぼ1なのではないか、という予測がある。 これは、0.01という値が極めて1に近い、との解釈によるもので、オメガは0.0000 0001でも1000000000でも良いはずだったのに、0.01などという値を取ることは特殊 である、というのである。宇宙の初期において、オメガが1よりわずかでも大きか ったり小さかったりすれば、おそらく宇宙は今のようにないだろう、と考えれば、 この宇宙が現在存在することをもってオメガは1であった(全ての物質が観測でき たなら1となる)だろう、と予測する説もある。 いずれにしろ、現在の宇宙が極めて穏やか(急速に膨張も収縮もしていないという こと)で、その密度パラメータも1に落ち着こうという向きがみられる。どうして そうなるのかは分かっておらず、宇宙の謎の一つとして「宇宙の平坦性問題」と呼 ばれている。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  ムーンライトエクスプレスからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ ご紹介リンク ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイルが【アストロナビ】の新着ホーム ページ情報で紹介されました。推薦してくださった方ありがとう(^^)/。  アストロナビ:http://i.am/astro-navi/ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ■ あなたもSETIやってみませんか? SETI(Search for Extraterrestrial Intelligence)とは地球外知的生命体探査のこ とです。アレシボ電波望遠鏡で捉えた宇宙からやってくる電波の中から地球外文明 の発したデータを見つけ出そう、というものです。 このデータ解析をあなたのパソコンでもやってみよう、というのがSETI@home(セチ ・アット・ホーム)です。SETI@homeが始まってそろそろ1年が経とうとしています が、全世界でおよそ200万の人がこのプロジェクトに参加しています。 参加方法はいたって簡単。サイトからスクリーンセーバー(クライアントソフト) をダウンロードしてコンピュータの空いている時間にこのスクリーンセーバーを動 かせばデータ解析が自動的に行われます。 あとは、データ解析が終わったときにちょっとだけ(3〜6分くらい)インターネ ットに接続します。解析結果をサイトに送った後、次の解析データをダウンロード します。 みごと、あなたの解析データに地球外文明の発したデータが含まれていたなら、あ なたはSETIの共同発見者として名を連ねることができるでしょう(希望者のみ)。 SETI@home は個人で参加することができますが、チーム(グループ)で参加するこ ともできます。そこで当ムーンライトエクスプレスでもチームを作ってみました。 SETI@homeを始めたら、次はぜひ当チームに参加してみてください。 全世界ランキングに名を連ねるには強者どもが多すぎてなかなか難しいのですが、 チーム内ランキングならばまだまだ余裕があります(^^)。 英語サイト  :http://setiathome.ssl.berkeley.edu/ 日本語サイト :http://setiathome.ssl.berkeley.edu/home_japanese.html チームのページ(「Join」でメンバー登録): http://setiathome.ssl.berkeley.edu/stats/team/team_36794.html ★ワンポイント メンバー登録するときパスワードが必要になります。「If you don't know your password, click here.」と書かれたところをクリックしてください。登録メール アドレスを入力するとパスワードがメールで送られてきます。                                    ☆ +                           チーム管理人:mojio …                            seti@mlexp.com + ☆ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ■ メーリングリスト登録者募集中! 当サイトでは、メーリングリスト(ML)を開設しています。MLとは電子メール を使用してインターネット上に擬似的な電子会議室を実現するものです。宇宙のこ とや科学、哲学全般について気軽に語り合ってみませんか?参加登録は、次のアド レスで随時受け付け中です。 ML参加・お問い合わせ mlexp-adm@y7.com 尚、このMLの詳しい内容はメールにて取り出せます。本文一行目に、 # guide とだけ書いたメールを、次のアドレスまで送付してください。このコマンドを送る 際 "#" と "guide" の間には半角スペースが必要です。HTMLメールは無効となりま すのでご注意ください。サブジェクトは無視されますので何でも構いません。 MLコマンド受付 mlexp-ctl@y7.com ※ 詳細は、ムーンライトエクスプレスのWebサイトでも紹介されています。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ■ MLEXP. エレクトロファイル 登録解除/アドレス変更について ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイルは、以下のメルマガ配信サービス を利用して配信されています。アドレス変更/解除は、現在ご利用中のサービスの サイトか、当サイトの総合登録/解除サイトから行ってください。  サービス名 URL マガジンID  ----------------------------------------------------------------------  まぐまぐ http://www.mag2.com/ 0000016842  パブジーン http://www.pubzine.com/ 3690  ココデメール http://mail.cocode.ne.jp/ 0700400094  melma! http://www.melma.com/ m00002508  nifty Macky! http://macky.nifty.com/ 2077  E-Magazine http://www.emaga.com/ mlexp  BIGLOBE カプライト http://kapu.cplaza.ne.jp/ 243  ----------------------------------------------------------------------  総合登録/解除サイト http://www.mlexp.com/mm/regist.htm ※BIGLOBE カプライト については、登録/解除の際にユーザID とパスワードが  求められます。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ■ ご意見、ご感想受付 ムーンライトエクスプレス−エレクトロファイルに対する、ご意見、ご感想などは 随時受け付けております。また、記事の内容に誤りなどありましたら、ご遠慮なく どんどんご指摘ください。皆さんのご意見をお待ちしています。 ご意見,ご質問受付 electrofile@mlexp.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  今月のコラム ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 生命科学が最盛の今、人工生命の研究も並行して急速に進歩している。そもそも、 生命とは何か?そんな問いに、人工生命を研究することでアプローチしようという 研究者も多いようだ。かつて神々の時代には、生命とは、神の意志と慈悲によって 創られたものだった。それが今では、人の手で、一から創造されようとしているの である。 人工生命をつくる、ということは、既存の生命の性質を知り、それを人の手で構築 するということである。どうも、現存の地球生命を見ていると、それは自ら成長し、 自らの子孫(複製)を後世に残して世代交代を繰り返す、という作業を行うものの ようである。このような機械的な作業であれば、いずれ人工的なものでも実現でき そうである。 しかし、この世代交代のプロセスには、実際は“進化”という要素が絡んでくる。 ダーウィンの進化仮説をベースに考えるなら、様々な形態の生命が誕生し、その中 でより環境に適応した者が多く生き残り、その子孫を残すことができる。さらに、 何らかの要因によって突然変異を起こし、その生命の形や性質も時代を追うごとに 変わってくる。さて、これは機械的に実現可能だろうか? 例えば、最初に様々な形態の人工生命体をたくさんつくっておく。それらに組み込 むプログラムには、別の生命体を襲ったり、その生命体から逃れたりするアルゴリ ズムも組み込んでおく。また、ある程度長い期間世代交代できた生命は、一定の確 率で突然変異を起こすように仕組む。このようにすれば、地球上での生命の進化の プロセスは、概ね再現できそうである。あとは環境がその生命の運命を左右すると いうわけだ。 このような生命シミュレーションゲーム『クリーチャーズ』が米国でリリースされ、 コンピュータゲーム史上空前のヒット作となっている。これは“ノーム”という仮 想生物をコンピュータ内の仮想世界に創造し、それを育てるゲームだが、その仮想 生物自身が自分の存在する環境に影響し、その環境が仮想生物にも影響するという まさに複雑系で考えられている世界の営みを実現している。制作者サイドでは、こ の生命が、自己を認識する知能、或いはそれに類似した性質を持つようになる可能 性も示唆しているようだ。 そもそも、生命がこのように仕組まれてつくられたものかどうかは定かではないが、 その仕組みや方法論そのものを考えるということに関しては、こうした人工生命の 試みは有効だと思う。昆虫レベルの生命を人の手で実現しようとしただけでも、い かに複雑で、また、それがいかに精巧にできているかが分かる。比較的その環境に 擾乱の少ない仮想世界の“ノーム”であっても、まともに育てていくのはかなり困 難らしい。  関連サイト:  http://www.creaturelabs.com/ (クリーチャーズホームページ)  http://www.creatures3.com/ (クリーチャーズ3リリースページ) ( 2000/05/20 月影 ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ MOON LIGHT EXPRESS ━━━━  発 行 : ムーンライトエクスプレス  編 集 : ムーンライトエクスプレス編集室 WebURL : http://www.mlexp.com/ E-Mail : admin@mlexp.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━