ネットワークの顛末

ここ近年で、ネットワークは劇的な進化を遂げた。ほんの10年前、今のインターネット、ネットワークインフラの社会が予想できたであろうか?携帯電話が高価なモノ、パソコンなんてその専門家かマニアが使う道具だ、という見方が、この10年でキレイに一掃された。今では、子持ちの母親が、育児相談にインターネットを駆使するような世の中になってしまった。

もともと軍事目的に開発されたのがインターネットだが、そのサーバクライアント方式のネットワークは、情報を分散して保存し、それらをさらに多くのユーザが共有参照できるという、実に合理的なシステムであったため、今のような状態になるに至っている。重要なのは、人間同士が、より合理的にコミュニケーションが取ることができ、かつ、有効な情報は必要なときに参照できる共有状態が保たれている、ということだ。

なぜ、人はこのようにネットワークを開発し、進化させるのか?それは、お互いのコミュニケーション、ということ、また、情報の蓄積、共有ということが、今、とても重要視されているからである。人は、もともと群で生きる動物である。そして、これは人間に限らない。例えば、広大な海を回遊するクジラの仲間たちも、その発達した聴力によって音によるつながり、つまりは「ネットワーク」を確立していることが、最近の研究で明らかになってきた。全ての生物にとって、お互いのコミュニケーションを保つことは、最優先課題なのである。

人は、本能的なつながりはもちろん、さらに上位のつながり、つまり、よりインテリジェント(知的)なつながりも求めている。人間は、もともと孤立して存在できない、スタンドアロンでは意味がない存在である、と言えるだろう。そして、その知的接続を効率的にはかる手段として、ここ近年で急速に進化したのが「コンピュータ・ネットワーク」だ。そう、コンピュータは、なるべくしてネットワークの担い手となったのであり、もともとスタンドアロンではあり得ないものだったと考えることが出来る。

物理的接触がなくとも、このネットワークを介せば、より少ないエネルギー消費で情報交換が可能となる。逆に、このことは、お互いの物理的接触の意味を希薄化しているともいえる。そこに情報があり、それが共有されていれば、もはや実体は必要ないのかもしれない。情報は媒体に蓄積され、フィックスされ、より高度になり、合理的になり、それは後世まで永久に残る。今はコンピュータのディスク、という媒体であるが、それに相当する生体のメディアを考えれば、それは「脳」であり、究極的には「遺伝子」であろう。そして、それらの発生以前の情報は、今、人の手によって収集され、確実に、ある情報メディアに保存されている。こうしてみると、「ハードウェア」の進化は、「ソフトウェア」の進化に追随している、と思える。さらに、「人の誕生の意味」も、そのあたりに求められるかもしれない。

ちなみに、地球上の人口は今56億人に達するといわれている。これは、人間の脳内のニューロンの数に相当する。人同士がネットワークでつながっていく様は、人間が成長過程で脳内のニューラルネットワークが確立されていく様にとてもよく似ている。人がそうであるように、地球も一つの意志を持って、他者とのコミュニケーションを求めるべく進化をはじめようとしているのか‥‥。