数論考

算術、数学、とにかく数に関するメモ。

ピタゴラスの定理(三平方の定理)

直角三角形の斜辺の二乗は、他の二辺の二乗の和に等しい。

もう有名過ぎ。

ピタゴラスは「数には数の論理がある」と説いた。 数は、単にものを数えたり計算したりするために利用されるだけでなく、 数そのものに価値を見出そうとした。

「数」というのは、 我々が目で見て手に触れることのできる世界とは独立に存在すること、 それゆえに、「数」に関する研究は、 知覚につきものの不確かさを免れることができるとした。

完全数

…の前に。

ものを1つ2つと数えるときに使うのが自然数。 この自然数と、比を表す分数とをまとめて有理数という。

ピタゴラスの提案

数の完全性は、その約数(その数を割って余りが出ない数。つまり割り切れる数。ただし、その数自身は含まない。)によって決まる。

例えば、12の約数は、1、2、3、4、6。

その総和は16なので、12は過剰数である。

そして、約数の総和がその数自身と同じになる場合、それを完全数と呼ぶ。

例えば、6の約数は、1、2、3。

その総和は6(その数自身と同じ)なので、6は完全数である。

6の次に現れる完全数は28。

これらの数は神学的にも都合が良いもので、 例えば、「神は6日で天地を創造された」という話を支持するものだとして、 その時代に歓迎されたようだ。

ちなみに、月は約28日で地球を1周する。(厳密には、27 日 7 時間 43.7 分)

完全数を探せ

28の次は496
その次は8128
その次は33550336
その次は8589869056

その法則性はあるか?実は、こうなっているのだが。

つまり、完全数は連続した自然数の和になっている。 しかし、次に現れる自然数を求める法則というのは、今のところ見つかっていない。

2のべき乗の数

ピタゴラスは、次のことを発見した。

 2のべき乗の約数の総和は、常にその数自身より1だけ小さい。

つまり、こういうこと。

これと完全数との間に関係があるのではないか、 と考えたのは、エウクレイデス(ユークリッド)だった。

ただ、この規則が最後まで成り立つかどうかは証明されていない。 (現在、コンピュータによる探索が続けられている。)

存在しない数

約数の総和がその数自身よりも1だけ少ない数は、上に述べたとおり2のべき乗の数。

ところで、約数の総和がその数自身よりも1だけ大きい数は存在しない。 というか、今のところ発見されていない。 そしてそれが存在しないという証明もすることができていない(今のところ)。

数が持つ意味

調和音

ピタゴラスは、鍛冶屋の前でハンマーが鉄に打ち下ろされる音を聞いていて、 あることに気付いた。

様々な音が調和して鳴っている(調和音になっている)ところに、 あるハンマーだけがなると、音は調和しなくなる。

これはなぜか調べたところ、音が調和するハンマー同士の重さは、 簡単な数比であらわすことが出来ることがわかった。 あるハンマーに対して、その重さが2分の1、3分の2、 4分の3となっているハンマーの音は調和する。 そのような簡単な数の比であらわせない重さのハンマーは不調和になる。

ピタゴラスはこのようなところに勘を得て、 数と自然現象(数学と自然科学)というのは、 基本的なところでつながっているのだという主張をするようになったという。

河川の距離

ケンブリッジ大学のステルム教授(地球学者)は、面白い提言をしている。

曲がりくねった河川の実際の長さと、水源から河口までの直線距離の比をとると、 実際の長さは直線距離の約3倍になるということがわかったという。 実はこの比、大体3.14に近い値、つまり\piになるらしい。 つまり、円の直径と円周の長さの比(円周率)と同じになるというのだ。

実際、様々な自然現象が数で表現されることを鑑みて、 数というのは万物の真理を表すものではないか、という主張は根強い。

そもそも、ピタゴラスの定理がどんな直角三角形についても成立する という事実は、実はかなり驚くべき法則性であるといえる。

チェスボードの問題

8×8の64マスあるチェスボードの対角2つを削って62マスとしたチェスボードがある。 また、この2マス分の大きさのドミノ牌が31枚ある。 このドミノ牌で、62マスのチェスボードを覆い尽くすことができるだろうか。

fig_chessboard.png fig_domino.png

結論は、31枚のドミノ牌でこのチェスボードを覆いつくすことは不可能。

実証科学者は、31枚のドミノをあらゆる置き方で並べてみて、 何度やっても失敗し、最終的に1度も成功しないので、 結論として「不可能である」と結論するかもしれない。

しかし、それでは、まだ試していないパターンもいくつか残され、 その中に覆いつくすことができるパターンがあるという可能性もある。 つまり、完全に「不可能」ということはできない。

しかし、論理的にこれを実証することも可能である。

つまり、こうだ。

  1. ボードから削られたマスはいずれも白である。
  2. つまり、黒32マス、白30マスを、31枚のドミノで覆えるかを考えれば良い。
  3. ドミノ1枚は、必ず隣り合う白黒の2マスを覆う。
  4. つまり、30枚のドミノによって黒30マス、白30マスを覆うことになる。
  5. 残った2マスは共に黒である。
  6. 3の事実を考慮すると、それを残り1枚のドミノで覆うことは不可能である!

これなら反駁の余地なし。

ピタゴラス数

ピタゴラスの定理を満たす3つの組数を「ピタゴラス数」という。

 x^2 + y^2 = z^2

これを満たす数を考える。

例えば、x = 3, y = 4, z = 5 は、

 3^2 + 4^2 = 5^2

で成立するので、ピタゴラス数である。

これは、 x^2枚の正方形とy^2枚の正方形の和が、 z^2枚の正方形となるようにすることである、 と考えることも出来る。

fig_pythagoras.png

この図の場合、9枚と16枚の正方形を足したら25枚の正方形になる、ということになる。

指数を3以上にする

ならば、次の方程式を満たす組数はあるだろうか。

 x^3 + y^3 = z^3

指数が3になっただけであるが、 実はこの式を満たす整数は存在しない!

上の要領で考えると、例えば、 3^3個の立方体と4^3個の立方体の和を求めたら、 5^3個の立方体になるのではないか? と思うが、そうはならない。3^3 + 4^3で求まる個数では、 9^3個の立方体をつくるには1つ足りないのだ。

フェルマーの予想

上の問題は、より一般的にこう書ける。

 x^n + y^n = z^n (ただし、n > 2)

この式を満たす整数、xyzは存在しない。

この予想が17世紀のピエール・ド・フェルマーによって提出されてから 20世紀末まで、実にまるまる2世紀以上の間、 このことは誰も証明することができなかった。

フェルマーは「この証明を完了していた」といわれているが、 その証明がどの文献にも残されていなかった為、 これを「定理」とするか「予想」とするかは、専門家の間でも意見が割れていた。 (現在はもう「定理」。)


自然科学・哲学系メモ


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