真空の相転移

宇宙膨張の過程では、真空は常に同じ真空ではなく、その状態が何度か変化したとされています。この状態変化のことを“真空の相転移”と呼びます。

相転移とは、ちょうど水が沸騰して水蒸気へ変化するのと同様の現象です。本質はそのままですが、その性質が次々と変化していくのです。宇宙の場合、最初一つに統一されていた力(力学で扱われている力)が、相転移の過程で分化していった、と考えられています。最初の真空から1032Kまで冷えたとき(冷えたといってもまだ超高温)、第一回目の相転移が起こったとされています。このとき“重力”が分化しました。さらに1028Kまで冷えると“強い力”(クォークと呼ばれる最も基本的な素粒子同士を結びつけている力)が分化し、1015Kまで下がると最後の相転移が起こり、“弱い力”(中性子と陽子などを結びつける力)と“電磁気力”とに分化した、とされています。つまり、真空の相転移によって、最初は一つだった力が、現在知られている力学系の四つの力、即ち、重力、弱い力、強い力、電磁気力に分化した、と考えられているのです。