一般相対論の4次元時空は、適当に導入された時間座標一定の面にスライスされた3次元空間 の時系列として捉える。これを、時空の 3+1分解 (正準形式, ADM形式)と呼ぶ。
上の計量が
( ) ・・・(1)
のとき、4次元時空線素は
・・・(2)
と表せる。4次元計量テンソル10個のうち4つは座標によるパラメトリー化の自由度であり、力学的変数は6個になる。(2)は が6個になるように表現したものである。
時空ダイナミクスを与えるアインシュタイン−ヒルベルト(Einstein-Hilbert)の作用積分は、表面積を除いて
・・・(3)
と表せる。ここで
・・・(4)
は外部曲率と呼ばれ、 の埋め込みの仕方を与える。
また、は内でのスカラ曲率である。例えば、円柱面では, となり、固有曲率 はゼロだが、3次元空間への埋め込み方に曲率がある( )ことを意味する。それに対して、球面ではとなり、固有曲率もゼロではない。
(3)のラグランジアンはラプス(lapse)との時間微分を含まないので、これら4つの関数はダイナミクスの変数ではないことを意味する。とは座標系の選択に応じて決まるゲージ関数ということになる。
宇宙モデルは、一様、等方3次元空間であり、その計量は定曲率空間として次のように表現される。
・・・(5)
・・・(6)
ここで , 。は曲率の符号を表し、をとる。の場合, の場合として、動径座標を導入すると(6)は
・・・(7)
と書ける。
で, で, でとなる。
と書けば、定曲率空間の曲率は
・・・(8)
であり、スカラテンソルは である。
をに依存しないようにとれば、 上の各点での固有時が同一になるので、そのような を宇宙時と呼ぶ。また、測地線方程式で ならとなるためには を取れば良い。ととれば、一定の世界線がテスト粒子の軌跡となり、このような座標系は物質に付随しているので共動座標と呼ぶ。世界時と共動座標を用いて(2)は次のように書ける。
・・・(9)
に(5)(6)(7)などと表せる定曲率空間の計量をとり、にとった計量(9)をロバートソン−ウォーカー計量(Robertson-Walker metrics)(R-W 計量)という。この計量は対称性と座標系の取り方によって決まるもので、一般相対論のダイナミクスは一切使われていない。
座標(7)でのR-W計量を用いて、動径方向 での光線の伝播は
・・・(10)
で表せる。動径座標がだけ離れた光源と観測者の間にに発射した光がに受信され、に受信されるとすれば、(10)より
・・・(11)
ゆえに、ならば
・・・(12)
と書ける。
R-W計量に対して作用積分(3)を書き下せば を用いて
・・・(13)
ここでは空間座標について積分した体積。
物質として共動座標に静止した媒質を考えたとき
・・・(14)
全ラグランジアンは
・・・(15)
運動方程式は オイラー−ラグランジュ(Euler-Lagrange)(E-L)方程式
・・・(16)
より導かれる。に対しては
・・・(17)
というハミルトン(Hamilton)の拘束条件が得られる。ここで なる新しい時間座標をとれば、
・・・(a)
このをとって、として(16)を用いると
・・・(18)
となる。ここでの項は熱力学第1法則を断熱過程に用いた式 より
・・・(19)
であり、これを(18)に代入すると
・・・(b)
となる。
(b)に(a)を適用すると
・・・(c)
(a)の右辺をエネルギー項と呼び、左辺第2項を曲率項と呼ぶ。なら原則膨張となる。
物質の典型例として「ダスト」(), 「放射」(), 「真空」()を扱い、(19)より、各々
, , 一定 ・・・(20)