宇宙の将来

宇宙は膨張している。では、その宇宙はこれからどうなっていくのでしょうか。

この仮説はいくつか考えられています。この膨張が止まることなく永遠に続く場合、膨張がいつか止まってそのまま定常状態となる場合、そして、膨張がいずれ収縮に転じる場合の三つのシナリオです。宇宙論では、永遠に膨張し続ける宇宙を“開いている宇宙”、膨張が止まる宇宙を“平坦な宇宙”、収縮に転じる宇宙を“閉じている宇宙”と表現します。これらは、いわゆる“フリードマンの宇宙モデル”といわれているものです。

さて、私たちの住むこの宇宙が、果たしてどの運命を辿ることになるのか、それは、宇宙に存在する物質の総量、つまり宇宙全体の質量により決定されます。宇宙には様々な形態で物質が存在しています。それは、何も銀河や恒星といった光る天体に限りません。私たちの目に見えない物質も、宇宙全体の質量を左右することになります。むしろ、現在では、見えている天体は、宇宙の質量のごく一部に過ぎないことが分かっていて、見えない質量の方を“ダークマター(暗黒物質)”と呼び、その正体の解明が現在世界中の研究者によって進められています。

では、宇宙が開いているか閉じているか、これを求める方法を簡単にお話しておきます。

開いている宇宙と閉じている宇宙、そのちょうど中間の宇宙、つまり、平坦な宇宙の質量が分かれば、実際の宇宙の物質の量が、それより多いか少ないかで決まることになりますね。この平坦な場合の宇宙の平均物質密度は、ハッブル定数を用いて 3H2/8πG (G は万有引力定数、πは円周率)と表されます。この物質密度のことを、“臨界密度”と呼びます。仮に、臨界密度をρ0 とします。これに対し、実際に観測される物質の質量から求められる密度を ρ とすると、ρ/ρ0が1より大きいか小さいか、ということで、宇宙の開閉を見ることができます。このρ/ρ0 の値のことを“密度パラメータ”と呼び、よくギリシャ文字の Ω(オメガ)で表記されます。

つまり、このΩが1より大きければ閉じた宇宙、Ωが1より小さければ開いた宇宙、そして、Ωがちょうど1であれば平坦な宇宙ということができます。私たちのこの宇宙は、現在のところ、実際に観測される物質の量が少ないので“開いた宇宙”ということになっています。ただ、まだまだ観測されていない物質は多くあるはずで、これからの宇宙観測において、その究明が求められています。