システムを考える

“生命宇宙論”は、宇宙における現象、その起源、存在理由、全てを統合的に説明することを目指しています。

現象、とは、つまり、そういう“情報”です。それがそこにそうあると確定される、ということは、それがそういう情報として何者かに認識される、ということに等しいと考えます。例えば、あなたが今ネットサーフをしていることは、ネットワーク上で出会う誰かに認識されている。また、それを後ろから見ている友人なり、親なりもいるでしょう。さらに、部屋の中にペットでもいれば、そのペットによってあなたのその姿が認識されているかもしれません。そして、辺りにいるであろう微生物も然り、目の前のコンピュータも、ひょっとして逆にあなたを見ているのかもしれない、そして、部屋全体、家全体、地球全体、さらに宇宙全体で、その情報が認識され、共有されている…。つまり、宇宙とは、そうした情報共有によって成立しているわけです。こうして関連づけられ、一つの意味を持つものを“システム” と呼ぶことにします。

情報によって情報が管理されている、つまり、視点は必ずしも人間ではありません。この情報共有によって、全ての現象は、量子力学における、いわゆる不確定性※1には依存しなくなります。現象そのものが情報であり、そういう情報が他の情報と関連付いている限り、それは確固として“存在する”のです。逆に、一つの情報がその他全ての情報から切り離されてしまうと、その情報はその意味を失います。つまり、それは“存在しない”ということになる。情報は認識されて意味を持つ、と考えるのです。だから、宇宙全体は、そこにある情報を収集し、蓄積し、それらを互いに繋ごうとする。より多くに認識される状態、つまり、共有状態を保とうとする。つまり、それは“存在しようとする”ということです。宇宙全体はそういう方向へ進化する性質を持つのです。そのシステムが“生命” ということになります。

ここで、それでは話が矛盾していないか、と問われるかもしれません。そう、ビッグバンモデルです。宇宙は今膨張している。これは紛れもない観測的事実。ということは、宇宙は繋がるどころか、お互いに隔離されていっているではないか…?

ここで、宇宙をシステムとして見た場合、もっと巨視的な視点になります。まず、宇宙を観察しているのは人間(あるいは自分)である、という先入観を捨ててみます。宇宙の膨張は、もっと巨大な宇宙の視点で、進化の通過点のほんの一部である、と見るのですね。宇宙全体とは、空間レベルでも時間レベルでも、私たち人間が考えるそれよりもっと壮大なものなのです。

“生命宇宙論” でいう “生命とは、“存在すること” を目的とする “システムそれ自体です。そして、その “生命”のみによって成立しているのが “宇宙” だという仮説が“生命宇宙論”なのです。物質的なもの、つまり現象レベルに主眼をおいてきたこれまでの宇宙論と大きく異なるのは、その“システム”に根幹がある、というところです。宇宙の存在した原因に、その“システム” としての “生命” を据えることで、これまで“物質”を考えて行き詰まっていた宇宙の存在理由や、派生する現象の意味付けなどをしてみたいのです。

※1 不確定性: ものの状態は、それを観測するまである確率を持って認識されるという考え方。量子力学では、物体の位置と速度は同時に100%正確には決まらない(不確定性原理)とされる。